TOX

□悪夢よ、もう一度
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「ジュード。」

名前を呼ばれて振り向くと、アルヴィンがいた。

「わ、ビックリした。アルヴィン、どうしたの?」

割と近くにいたようで、目の前にはアルヴィンの姿。

「キス、しようぜ?」

「え、わ、・・・・んん」

アルヴィンが言った瞬間に僕はアルヴィンへと倒れこんでいた。
驚いて、目を開いていると大きくアルヴィンの顔が広がっている。

「ん、っ・・・・、」

ただ触れるようなキスじゃなく、舌を絡めた深いキス。




「・・・・・、は、はっ・・・」

どれくらいキスをしていただろうか。
もしかしたら少なかったかもしれないし長かったかもしれない。

時間を忘れるくらい、甘いキス。

「くく、ジュード君真っ赤。」

「あ、アルヴィンがいきなりするから・・・・、」

「だってジュード君が可愛いし。」

「っ〜〜////僕に向かっても嬉しくないよ///」

「くすくす、ホント可愛い。」

「まだ、言う?」

「本当のことだからな。」

「なあ、ジュード」

「何?」

「好きだ、愛してる。」

「っ!!!、アルヴィン・・・のバカ・・・///」

僕も、と発した唇は再びアルヴィンによって塞がれる。


そのあとに待っているのは甘い行為ーーー・・・、


















「・・・・、なわけはないよね・・・・。」

ふとした瞬間に目が覚めた。

つまりさっきの一連のことは綺麗な夢だったということだ。
夢オチにしてはリアリティがあった気がする。

夢は願望の表れだと、聞いたけれどまさか出てくるとはね・・・・。



確かに僕はアルヴィンが好きだ。

けれど・・・、それだけにすぎない。



ベッドから起き上がって横を見ると、隣のベッドにはアルヴィンがいる。
部屋割りでアルヴィンと一緒になったからだ。

まだ、寝てる。

時刻を見るとまだまだ夜は明けることはない。
ベッドから起き上がるときに感じた腰の痛みは昨日の行為のモノ。

アルヴィンは、時々僕を抱く。

気まぐれなのか、性欲処理のためなのか。
どっちにしたって部屋が一緒な時は必ずだ。

その間にさっき夢で見たような甘い言葉などない。

「っ・・・・、」

気を失ったであろう僕をアルヴィンはいつも後処理をした状態で寝かせてくれる。

そろそろとアルヴィンのベッドに近づいていく。

アルヴィンの顔が見たくて。
いつも、僕が先に眠ってしまっているから。

「・・・・・、」

歩くたびに腰は痛みを訴える。
けれども、これはアルヴィンが抱いてくれたという証拠になる。

痛みしか感じられないけれど、

「すう、・・・・・」

アルヴィンは穏やかに眠っている。

そっと座り込んで、眺める。

あ、まつ毛長い・・・・・。

鳶色の瞳がこちらを見ることはなく、規則正しい寝息が聞こえる。


キス、したい


そう思ったのは夢の影響か

いつもの行為中にキスなどしない。
正確には唇には決してしない。


一回だけだから、

そう意を決してアルヴィンの唇へと近づいた、



「何してんの?」



唇が触れ合う瞬間に鳶色の瞳が僕を射抜く。

「あ、・・・・っ・・・」

キスがしたくて、など口が裂けても言えない。
ましてやアルヴィンに告白などできるわけがない。

「まさかまだ足りなかったわけ?」

アルヴィンは僕を押し倒し、

「くく、やっぱジュード君って、淫乱だよな〜?」

耳元で呟いた。

違う、
違う、
違う、

「昨日、あんなにしたのに。」

そうじゃなくて、

「ほら、早く足開けって」

やめて、
見ないで、

「あ、っ・・・・!!」

「くすくす本当、淫乱」



それからの行為は痛くて、
口を手で塞がれて、
泣き叫んでも届かなくて、
抱きつくことさえもさせてくれなくて、




甘い言葉の代わりに罵声を
甘い行為の代わりに痛みを




夢、夢、夢、
さっき見た幸せな夢は現実になることはないものだと教えてくれる悪夢だった。



今度、見ているのは現実の悪夢。









  
(……、それでも覚めないでほしいと思うんだ)








END


→あとがき 



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