拍手ありがとうございます!




スヴェント先生、マティス先生

化学教師(35)×保険医(26)







「さてと、」


鞄から財布と携帯、そして包みを取り出した。
当然その包まれた中身は、弁当である。
携帯と財布はそれぞれ服のポケットに入れ、飲み物は買うかと思いながら廊下を歩く。
昼休みも残り五分とあって教室に戻っていくところらしい生徒たちとすれ違うと次々に声を掛けられた。
主に女子生徒に。
生徒はそういうところを見ていなさそうで、実はよく見ているみたいだ。


「あれー、アルヴィン先生って弁当なんだーっ。いつもコンビニ弁当とかのイメージだったー」


「本当だ〜。意外ですね!!」


「先生って料理できるんですか?あ、まさか奥さんとか!?」


きゃあきゃあと急いでたんじゃないのかと問いかけたくなるくらいに少女たちは盛り上がる。
しかし、時は経つもの。
無情にも本鈴が鳴り響く。
さっきのチャイムは予鈴ではない。


「ほーら、もう授業始まったぞ。とっとと教室に戻る」


そう促すと、さすがに生徒たちは急いで教室へと戻っていった。


「奥さん、ねぇ」


当たってるっちゃ、当たってるかな。
にやりと口角を上げて、保健室へ続く廊下をぺたぺたと歩いていく。
扉の前に何も掛かってないからおそらく自分の目的としている人物はいるだろう。
一応ノックしてからドアのノブに手を掛ける。


「お疲れ様です、マティス先生。一緒にお昼、食べません?」


ドアからひょっこりと覗けば、お目当ての姿。
書類をまとめていたらしく眼鏡をかけていた。


「・・・・・お疲れ様です、スヴェント先生。早く中に入ったらどうですか?」







************






顔を出したのが俺だと分かるやいなや、ジュードはあきれた様子だ。
変なところマメだよね、なんて失礼な。
それにつれない。
せっかく仕事の空き時間に恋人がやってきたというのに。
生徒が治療してもらう時に座る椅子に腰掛け、向かい合わせになる。

「お昼くらい、恋人と一緒に食べたっていいだろ?」


「・・・・・・」


「あ、ちょっと照れたか?」


「なっ、て、照れてないよ。それに今日はもう来ないと思って食べちゃったよ。」



否定しながらも頬を染め、そっぽを向くジュードに苦笑しながら自分の弁当を開けると、色とりどりの野菜サラダと時間を掛けなければできないであろう数種類のおかずに、三色ご飯が綺麗に顔を出す。
まったくもってできた恋人だ。
口調も普段、家にいる時と同じに戻ってる。
今日は確かに来るのが遅かったのは事実だ。
いつもは昼休み前にはもう食べ終わっているころだし。
そうか、そうか・・・・・寂しくて拗ねて食べちゃったか〜。
そう思うと、にやにやが止まらない。
嬉しくてつい、にやけていると何がおかしいの?とジュードはじろりとにらんでくる。
早く食べなよ、とジュードはさらに急かしてくる。
なんだかとっとと戻って仕事しろと言われているみたいであまり面白くないので、ジュードが飲んでいたカップをそっと奪って、くいと顎に指をかけた。
そのまま軽く口付けると、ジュードはふっと笑みをこぼした。


「どうしたの、アルヴィン・・・・。お昼まだなんでしょう?」


お昼食べないともたないよと心配してくれるところがまたジュードらしいというか。
でもその心配は杞憂だ。
午後は授業もないし、来週からはテスト週間だ。
もうテストは全て作ってあるので問題はない。


「それより、ジュード君が食べたい」


「・・・・・鍵、閉めてくれるなら」




しょうがないなぁ、と言われた時の俺の行動は早かったと思う。
鍵を念入りにかけて、扉には『出張中』の看板を出しておく。
これで万事オーケー。
よっぽどでない限り他人が入ってくることはないだろう。
その間にジュードは俺の弁当に蓋をして、包み直した。
ごめんな、せっかく作ってもらった弁当は今は食べられないわ。
ちゃんと後でゆっくり食べるから、今は勘弁。
そう心の中で詫びながら、再び奪ったジュードの唇からは甘いミルクティーの味がした。





END



今回は珍しく会話文じゃありません(笑)
先生同士(?)ということでちょっとアダルティな感じを出したかったんですけど恐ろしいほどに撃沈しましたね・・・・・orz




なにはともあれ拍手ありがとうございました。


緋色

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