劇場版
□地獄篇
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俺たちはその場を恋次と石田に任せて先へ進んだ。
それからいくつか蓮の船を跳び渡ったところでコクトーが振り向いた。
コクトー「ここだ!飛び込め!」
言ってすぐ飛び込んだコクトーを追って俺も続いた。
分厚い水の層を抜け、灰色の雲海が広がっている空間に出た。
ところどころから岩山が見え、その山頂の水溜りには黄色い液体が溜まっている。
一護「あれ?ルキアはどうした・・・?」
空を見上げたが、ルキアが落ちてくる気配はない。
コクトー「どうやら・・・上で足止めされちまったみてぇだな。
だが心配は後だ、一護。ここを抜けたところに、やつらがアジトにしている場所がある。お前の仲間が敵を引きつけてくれてる今なら、そっちの方は手薄なはずだ」
話を聞いていたその時、背後から水音がした。
俺がその出所を確認するより早くにコクトーに腕を掴まれて投げ飛ばされた。
俺は慌てて体制を立て直してコクトーを見た。
黄色い水溜りから出てきたクシャナーダにコクトーの鎖が掴まれていた。
俺はホロウ化し、クシャナーダの腕を切り落とし、更に大きな斬撃でクシャナーダを粉砕した。
一護「大丈夫か!?」
コクトー「俺のことはいい。お前は彼女と妹を救うことだけ考えろ。
あの沙亞埜って子、お前らの話を聞く限りじゃ相当なお人好しな上に無茶ばっかする子なんだろ?」
一護「あぁ・・・沙亞埜は出会った時からそうだった。自分より他人のことばっか気にして、いつだって俺の心配ばっかりしてたんだ・・・」
コクトー「そうなのか・・・。見たところあの子にはそれなりの霊圧はあった。地獄にいても多少はもつはずだ。
だが、お前が言うような子なんだったら、その霊圧にものいわせてお前の妹を護ってるかもしれない。
急ぐぜ、一護!早くしねぇと足止めしてくれてる仲間に申し訳ねぇだろ。
それに、沙亞埜って子が危ねぇかもしれねぇしな」
一護「ああ・・・そうだな」
コクトーに連れられて、俺は灰色の砂漠にたどり着いた。
コクトー「なぁ、一護。あの2人を取り戻したら・・・一つだけ頼みを聞いてくれねぇか?」
一護「頼み・・・?なんだよ?」
コクトー「俺を、地獄から解放してくれ・・・!」
ここで俺はコクトーの妹の話を聞いた。
そして、コクトーは生まれ変わりたいのだそうだ。家族と会うために。
一護「・・・わかった。俺にそんな力があるなら、協力してやる」
コクトー「すまねぇ」
それから俺たちは丘を上がって、やつらのアジトにたどり着いた。
そこには巨岩を環状に配置したようなものがあった。
その中央には溶岩の池があり、骸骨がそれを覗き込むように配置されていた。
丘を駆け下りた俺は、骸骨から伸びた鎖に檻がぶら下がっていることに気付いた。
その中には遊子と、その遊子を抱きしめて横たわる沙亞埜の姿があった。
そして俺たちの予想通りに沙亞埜は自分の残った霊圧と霊力で遊子を包んで護っていた。だがその分、沙亞埜への負担は大きいはずだ。
急いで駆け寄ろうとした俺の上から声が聞こえた。
朱蓮「よく来たな・・・黒崎一護」
声のした方を見ると、そこには朱蓮がいた。
朱蓮「知っているかい、黒崎一護?貴様がこの者たちの命を助けたければ私の言うことを聞くしかないと」
コクトー「こっちは二人だ。お前、一人で俺たちの相手をするつもりか?」
朱蓮「一人ではないさ・・・咎人は地獄では死ねないのだから」
その瞬間、溶岩の池からルキアたちが相手にしていたはずの三人が出てきた。
どうやらこの三人は俺たちをみんなから引き離すための囮だったらしい。
コクトーは一人であいつら三人の相手をし、俺は朱蓮の相手をすることになった。