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□元拍手一月
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どうせ信じてねーし。
金が勿体ねえ。
てか当たんねーよ。

散々貶して甘酒配布をひやかしに行った二人には悪いが、やることのない迷子はおみくじを引くことにした。そしたらどうだ。

「大吉だ……」

見事なまでに良い事しか書いてない。逆にどうしよう。思い切り保護者とはぐれたなうのオレの方が申し訳なくなってくる。大吉に見合わない境遇でごめんなさい。

えっと、おみくじって枝に結ぶんだっけ。それとも大吉は持って帰るんだっけ。
そんなことをぼんやり考えながら歩いていると背中に何かあったかいものがぶつかった。人だ。

「あ、ごめんなさい……あれ、フレイキー?」
「ふぇっ、あっ、イチ!」

さすが『待ち人ご神縁あり』いや別に待っていたのではないが。
フレイキーは帽子と手袋と、耳当てまで着けてもこもこと膨れている。暖かいわけだ。

赤いもこもこは、オレを見るとふにゃりと笑った。

「あけましておめでとう!」
「明けましておめでとう」

返事をしながら人ごみを脇に抜ける。

「フレイキー、ひとり?」

縁石を越えて境内の隅に落ち着くと、案外人気はおさまった。というかもしかしてこれはマナー違反だろうか。

「うん、と、ランピーに連れてきてもらったんだけどはぐれちゃったの」

どこかで聞いたような話だ。とても既視感がある。
フレイキーの方は危機感があまり無いようで(オレもだけど)、さっきから右手に弄んでいたおみくじを見つけて声をあげている。読みたそうなので渡しておいた。

「大吉だ!す、すごいねっ、いい事しか書いてないよ!」
「やっぱりそう思う?」
「うん。あ、ボクはね、吉だった!」
「へぇ、何か良い事書いてあった?」
「うん!今年のボクは幸運だって。それに当ったよ!」
「ん?」

今年は始まったばかりなのに?
不思議に思って首を傾げると、両手がふわりと温かい手袋に包まれた。

「イチに会えたから!」


思わず手を握り返せばフレイキーはえへへと笑った。

「ねぇイチ、今年もよろしくしてください」
「うん……こちらこそ」


(じゃあ迷子らしく社務所にでも行こうか)
(あ、ペチュニアがバイトしてたよ!)



【end】
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