SS
□どっち?
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「何見てんのっ?」
カドルスがサッカーボールを持ったまま、むしろそれを突き出すように、ベンチに座った黒い人影に突進している。
でもそいつは慣れたように、手のひらでボールを受け止め、カドルスごと静止させていた。
「カド、せめてボールは置けよ」
俺が後ろから声をかけると二人は同時に振り向いた。この二人、色も表情も、全部違うのに、こういうとこだけ似てるよな。
「トゥーシー、おっせーよ!」
「悪かったなトロくて」
無邪気に喚く黄色い頭に頼まれてたジュースを載せる。さっきカドルスのシュートを止められなかったペナルティだ。
「で、イチは何してんだ?」
カドルスはボールを捨てて、ジュースを両手で抱えると、当たり前のようにイチの隣に腰掛ける。こいつのこういうマイペースな(というか基本自己中だよなカドって)ところは慣れた。俺はボールを拾って、ベンチの背もたれに腕をついた。
黒い頭が視線を向けている方を見ると、そこには赤い小さいのがいた。
「フレイキーって……」
イチは微妙な顔で呟いた。
最近ここにやって来た全身真っ黒いイチは、いつも仏頂面だけど、今日は何と無く言いたい事が分かった。カドルスと顔を合わせる。カドも分かったらしい。
「一人称はボクだよねー」
「けど髪の毛長いだろ」
「女子の集まりにも参加してるじゃんね?」
「まー俺らがサッカーするときにも居るけどな」
カド、俺、カド、俺、で言い合う。
ちなみに今フレイキーはギグルスとブランコで揺れている。
「服は男女兼用だよなあれ」
ぼそり、とイチが呟く。
自分のことを完全に棚にあげてる。
「あ、声は高い!」
「カドルス、お前もだ」
大体、フレイキーは確かまだ13だったはずだ。あ、
「やべ、逃げろ!」
「へ?」
「……っ!」
何にも気付いていないカドルスを立たせた俺と、感付いたらしいイチが同時にその場から飛びずさる。
間一髪、さっきまで俺らが座っていたベンチはぶっ飛んだ。トラックに突っ込まれて。
「ランピーか……」
「ランピー!?」
「ランピー……」
まぁ、日常茶飯事だ。
(で、結局フレイキーは男?女?)
(( 不明 ))
【end】
不明。オチも不明。