SS

□有り難み
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その日の原因はフリッピーだった。

『この間イチにクッキーをあげたら、凄く美味しいって食べてくれた』ってゆう話を聞いてから、ソワソワし始めたボクを見て、フリッピーは、フレイキーもあげればいいよ、て言った。

「今から作ろうか?」

そう台所に立ったフリッピーは出しっぱなしの包丁で指を切っちゃった。



「よぉお、チビ」

にやぁっと笑うフリッピーは、いつもの優しいフリッピーじゃなくて、恐い方のフリッピーで、ボクが逃げられる訳なくて、スグに追い詰められた。腕を掴まれなかったのは、怪我してない方の手で包丁を持ってたからだと思う。

「ひっ……!」
「──……」

あれ?
な、なんでだろう。目をギュッと瞑って、お菓子は明日作ろう、って覚悟を決めたのに……痛くならない。

「……ふぇ?」
「オマエは、」

恐る恐る目を開けてフリッピーを見ると、いつもみたいな楽しそうな恐い笑いじゃなくて、不思議そうな変な顔だった。

「オマエは、ちゃんと泣くし、逃げるし、怯えるし、」
「ほぇ、へ?」
「妙な抵抗しねぇし、追い掛けてこねぇし、ちゃんと死ぬし、」
「…………」

な、何の話しだろ……?
ボクを見ながら淡々と言うフリッピーは、あんまり恐くなくて、思わず目を見たら、金色だったのに、

「オマエ、結構いいやつだな」

って、言って、感心したように笑った。


( いい子だから……殺してやるよ )
( ぴゃあぁあああ!やっぱりこわいぃぃぃ )


【end】

叫ぶなよ英雄がでたらどうすんだよ!

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