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□戯れ言
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「たまに考えるんですけど」
スニッフルズは着々と書籍を積み上げながら言った。
「命より大事なものを持っている人は死にやすい」
オレは検算みたいな気分で呼んでいた偉人伝から顔をあげた。
「例えばナッティは言うまでもなく甘いものを大事にしてるでしょう?ペチュニアは清潔であることを何よりもまず優先しますし、カドルスやトゥーシーは死ぬのが嫌なんじゃなくて、痛い事がキライなだけです。多分、彼らに大事なものを訊けば、おもしろい答えが聞けると思いますよ」
ずれてきた眼鏡を直しながら、スニッフルズの方は本に目を向けたままで話している。
「ギグルスは?」
「実に女の子らしい答えが返ってくるんじゃないですか?」
見た目とか。言いながら少年はページを捲る。
どうやら本気でジンクスを立ち上げようというわけでもないらしい。
「フレイキーは?」
訊くと、数秒黙ってから「平穏とかですかね」と返される。命よりも平穏が大切だというのは奥が深い。どこぞの立派な王様みたいだ。
「なら中々死なない人は、」
「命より大切なものがないということになりますね」
スニフもこの戯言の応酬が楽しくなってきたようで、さっきから開いたページは52ページのままだ。
「英雄は正義が大切だって言いそうだけど」
「ヒーローは正義こそ命なんです」
まるで言葉遊びた。
しかし、あながち間違っていないんじゃないだろうか、とも思えてくる。
スニフは例えにあげなかったが、双子なら『大切なものは?』と訊けば、金とか答えるだろう。ラッセルは釣りだと言いそうだ。ハンディは多分、仕事だ。
「スニッフルズは?」
「僕ですか?僕はやりたいように研究できる事が最優先です」
死にやすい自覚はあるらしい。
そう思っていたら逆襲された。「イチさんも結構死んでますよね」と。
「何なんですか、イチさんの命より大切なもの」
一瞬だけ白い霧が脳裏によぎったが、
オレは本を閉じると答えた。
「考えとくよ」
(そういえば薬品開発に失敗してナッティに猫耳生えたってほんと?)
(……ちゃんと引っ込だからいいじゃないですか)
【end】
読書仲間