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□元拍手一月
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「あけおめ」「以下略」

ばちっと焚き火の爆ぜる音がする。
振り返れば案の定双子がそろいのマフラーを巻いて立っていた。

「明けましておめでとう。……『ことよろ』くらい言いなよシフティ」
「いーだろ別に通じてんだから」
「つーかソレ何だよ!なに持ってんの?」
「あまざけ」

興味深そうに紙コップを見つめるリフティにそれを差し出す。向こうで配ってたタダだよと言うと双子の目が輝いたように見えたのは多分気のせいじゃない。
参拝客のごった返す神社で、モールさんとはぐれてどうしようかと彷徨っていたのだがまさか双子に逢うとは思わなかった。てっきり賽銭がもったいないとか言うタイプだとばかり思っていたが。

「二人とも初詣なんてするんだ」

呟くと、リフティがニィっと笑う。 

「バッカだなーお前」

かと思えばシフティがさっと後ろに回りこむ。何事だとオレが振り向く一瞬前に、

「ぅぐ」
「ハッ、察しの通りカミサマなんて信じてねーよ!」

上着のフードを引かれて後ろにつんのめりそうになる。そうか、賽銭もったいないどころか、

「……賽銭目当てか」
「せーかい!」「ち、カラかよ」

当たり前だ。そう上手くはいかない。どうやら除夜の鐘程度では泥棒の煩悩は祓えなかったらしい。


(商売繁盛でも祈ればいいのに)
(いーなソレ!でも後でな!)(ハッ、賽銭箱貰いに来るついでにな!)


 

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