×××

□もしもBL小説サイトだったら
1ページ/2ページ

【もしもBLサイトだったら】
 @鈍感くんと盲目さん
















「ねぇーひどいと思わない?人が一生懸命働いてるってゆーのに皆して愛を語らっちゃってさぁ」


でろぉんとテーブルにしな垂れながら僕は今日の分の愚痴を漏らす。本当ならソファとかクッションにダイブしたいとこなんだけど、あんまりだらしないと怒られるんだもん。というか踏まれるし。
ぐたっと力を抜いたままでいれば、微かな音と共にコーヒーの匂い。淹れてくれたのかなって顔を上げればそこには一人で悠々とマグカップを傾けるモールが居た。

「えええぇっ!?僕の分はっ?」
「要らないのかと思いました」
「いるよおっ!」

叫ぶと、モールはあからさまな溜息つきながらもことんとカップを置いて立ち上がる。何だかんだ淹れてくれるとこが可愛いよね?

「というか、どうして()が愛を語ってるのかがわかるんです?郵便屋さん」
「んん?手紙見てたら最近ラブレターが多くってさぁ」

しかもすっごいあっまい口説き文句のっ!最近の若者はレベルが違うなぁなあんて年寄りごっこをするのも結構楽しいんだけどさ。

そんなことを考えていると、台所から尖った声が飛んでくる。

「……お前は見ただけで中身が分かるのか」
「…………あ」

珍しく話しにのってくれたもんだからって、ちょっと喋りすぎちゃったかも……。

「読んだんですね」

たっぷり十秒は焦らした後の呆れえ声。

「……えへ」

だってヒマなんだもおーんと口を尖らせればさらに露骨な溜息が飛んでくる。
容赦ないなぁ、でも本当に暇なんだもん!できる限り元に戻して届けてるしっ!

「そんなに暇なら自分でも書いて玉砕すればいいじゃないですか」
「えぇーだって多分読んでくれな……って、玉砕っ?なんでフられるの前提なの!?」

思ったよりも近いところから返事が来て、慌てて振り返れば、すいっと目の前にマグカップ。
受け取ってお礼を言うけど、モールはスルーでとっとと向かいの椅子に腰掛ける。

「……ねぇ、なんで振られるの前提なの?」

重ねて問えば、見えてない目で見えてるみたいに自分のカップからコーヒーを啜って、しつこいとばかりに睨まれる。

「そもそもあなたは手紙を書くなんてそういうタイプじゃないでしょう」

煩わしそうな表情で言い捨てられた。
外じゃいい子ぶっちゃってそんな顔しないクセにねぇ?
思わず笑っちゃえば、モールの睨みがキツくなる。いや、声には出してないんだけど!なんでわかるの!?

「書いてるよぅ?僕だって!」

ついムキになって言えば、馬鹿にするようにこっちを向くサングラス。

「ここにっ!」

と、頭を指でトントン叩いてみればジェスチャーだけでも分かったのか呆れ返ったような視線を向けられる。いたい痛い。

「便箋に書いて出さないと意味がないと思いますけど」

そんなこともわからないのか。どこか楽しそうに辛辣な台詞を吐くモール。
まあなんていうか、その涼しげな顔もいいんだけどさぁ、

「……そうかな?」

余裕ぶった表情が一瞬固まる。
テーブルの上、無防備に投げ出されたモールの白い手。男にしては細いその指の先を、俺がちょっと突ついただけなのにね?

「──っ」
「たくさん書いてたらさ、いつか伝わるような気がするんだよねぇ」

まるで文字を綴るように。

形のいい爪をなぞって、からかうように手の甲まで逆撫でる。

「おい……っ」

注意してないとまったく変わってないように見える表情。それでも微妙に震えるその薄い肩とか、レンズの奥の瞳が揺れるところとか、触れたところから伝わる体温とか、拒絶しないで居てくれるその華奢な手とか、ああ俺には口の悪いところとか……ちょっとだけ動揺の浮き出た、他の誰にも見せないその顔とか。

あぁ君のそういうところがすごく、

「……今も書いてる」

──好きだよ。


【end】

(ねぇねぇー、そんなに読みたい?僕のラブレター)




















アンケートでこの二人が絡んでるのが好きって意見が案外あったので絡ませてみた。え、そういう意味じゃない?(白々しい)
※本編とは関係ないんで安心してください。

(おまけ)

次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ