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□元拍手一月
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「てゆーことでっ、はっぴーにゅういやあ!」
「いや、大分過ぎてるよ」












一月某日。
年末年始とモールさんの家に入り浸っていたので、いざ家に帰ってみれば冷蔵庫が空っぽだった。
まあ、腐った食品が入っているよりは幾分マシだが、このまま空きスペースを蔓延らせておくわけにも行かないだろう。
そろそろスーパーも営業を始める頃だろうし丁度いい、そう思って買い物に出かけた直後。オレは何故か主治医に拉致されていた。

「お?よぉ、イチ、年明けたな」

連れて来られたランピーの家には、片手のフックを挙げて挨拶をする元海賊がソファに座って寛いでいる。というか、テーブルの上の空き瓶とランピーの持っているレジ袋の中身から推察するにこの二人、昼間から酒盛りをしている。

「明けましておめでとう、ラッセル。これ、なに?」
「おぅ、おめでとう。なにってお前さん知らずに来たのか?」

来たって言うか、連れて来られたのだが。
後ろを振り向けば「まぁいいからいーからっ」とか何とか、ここまでオレを引っ張ってきた青髪金メッシュの長身が玄関扉を閉めながら言う。

「新年会だよう!さっきまでハンディもいたんだけど仕事あるとか言っちゃって帰っちゃってぇ。モール誘っても来ないしっ」

そうやってわざとらしく頬を膨らませるのだが、何せ顔が笑っているので何処まで本音なのか全く知れない。
というか、ならこの量のアルコールを実質二人で飲んだのか……。
オレは並んだり転がったりしている度数の高そうな瓶を見渡した。とても数える気にはならない。するとそんな考えを読んだかのようにランピーは言葉を続ける。

「それにすぐお酒なくなっちゃうから買いに出るじゃない?そしたらイチちゃん居るんだもん。ちょーどいいやと思ってつれて来ちゃった!」
「ちょーどいいやってお前……」

ラッセルが呆れたように言いかけるが、直後諦めたように軽い溜息をついて話し相手をシフトした。なんというか、流石に慣れているらしい。

「ま、そんなこった。……俺もそいつも多分まだ飲むけど、また後から来るヤツも居るし……まぁ座ってけよ」

どうも人数合わせというか、場繋ぎの色物として連れて来られた気がする、というか確実にその通りなのだが、それを知ってか元海賊はフォローをしつつ数人掛けのソファの隣をあけた。相変わらず、新年早々実に親切である。
言われたままに腰掛ければ、若干赤みの差した顔で、「悪ぃな、今お年玉もってねーわ」と茶化される。しかしこっちとしても、悪いがそこまで幼くない。

「じゃっ、そゆことで!」

話が纏まったところでランピーはレジ袋をがこがこ周りにぶつけながら向かいのスツールに一人座る。

「乾杯しよっか?」

そして満面の笑顔でその辺の酒瓶を無造作に掲げるのだった。


(お前さん、乾杯すんの何回目だよ……)
(んんー、まだ三回目くらいっ?)




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