×××

□しりとり
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T教室 『る』攻め
@策士とイチ

いつもの放課後。

「あれ、花壇の長さがマイナス三メートルになった」
「んな不可解な花壇があってたまるかっつーの」

とうとう赤点の数が洒落にならなくなったリフティが職員室に引き釣られて連れて行かれて約十数分。
流石にどうしてやりようもなく、シャープペンシルを課題プリントの上でガリガリと滑らせながら珍回答を生み出していれば、机を挟んで向こう側で興味無さげに携帯を弄っているシフティがぼそりと呟く。聞いてたのか。

「あっ、くそハート無くなった!くれ!」
「……オレSNSのゲームやってない」
「ハッ、それでも現役ジョシコーセーかっつの!」

現役男子校生が『ハート』とか臆面もなく言うのは良いのか。
シフは不服そうにスマートフォンのロックを落とすと、オレと対峙するプリントの上に抑え付けるようにベタリと掌を載せて来た。当然、こうなってしまえば問題を解き続けることなど到底出来ず、

「邪魔だよ」
「ヒマ。なんかしよーぜ」
「……生憎だけど、トランプもゲーム機もサイコロもリフの鞄の中だ」
「はぁあっ?マジでつっかえねーな愚弟!!」

いや、そもそも荷物、というか遊び道具を尽く弟に押し付けていたのはシフティその人である。

「なんかねーのかよ!このシフティ様がヒマだっつーのに!」

……別にオレはシフティ王国の民ではないので同級生が暇を持て余しているくらいでは困りもしないのだがその手元で着々と皴を刻んでいくプリントの安否は頂けない。
とは言え、手元に使えそうな物は無いし。手ぶらで出来る遊びといえば、

「……しりとり?」

半ば冗談で首を傾げれば、

「倫理」

一瞬で帰ってくる返事。
やるのか。

「林檎」
「ゴリラ」

そして、ぐだりぐだりと始まった暇つぶしの余興で、

「ラッパ」

オレがそう言った瞬間シフは見間違えようもなくにしゃりと哂った。



◇◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◇


「パイナップル」
「ルーレット」
「トンネル」
「る……ルビー」
「ビル」

「……シフティわざと?」
「ハッ、戦略だっつの!降参してもいーんだぜ?」

「……ルービックキューブ」
「ブラックホール」
「類似」
「ジャングル」
「ルーズリーフ」
「ファイル」
「ルンバ」

「リフが欲しがってた」
「買うの?買ったらオレも見たい」
「ペットかっつの!……バール」

「流刑」
「イスラエル」

「地名もあり?」
「国名までならな!」

「じゃあ、ルクセンブルク」
「クレゾール!──ハッ、読めてんだよ!」
「ん……流浪?」
「ウシガエル」
「瑠璃」
「……リサイクル」
「ルアー」
「…………嘲る」
「……何を」
「いーんだよ何でも!」
「累計」
「──インテグラル」
「流布」
「っ、フットサル」
「ループ」
「プール!」
「ルワンダ」
「だっ、……ダンボール」
「留守番電話」

「わ、わ──くそっ、わ、……ワッフルっ!」

「食べたいの?」
「んなワケあるかっつーの!!つかそろそろ限界なんじゃねーの?弾切れだろ!……弾切れだよな?」
「うん……確かに。そろそろ」
「ハッ、だろーな!じゃ好い加減降参し──」
「待った。あとひとつ」


「ルール」
「るッ!!?」


【end】

途中から見てたリフティ 「なにアイツら、キモい……」

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