長編

□英雄
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ぼキッ、という音と共にその男は現れた。
というより、その人が音をもたらした。

「駄目じゃないか覚醒くん、人を傷つけてはいけないよ!」



──それは今までに出会った色とはまた違う、とても高い空の青。

















「今日はなんで殺したの?」
「殺したかったから以上あとてめぇのことも殺すからな以上」

ぴちゃっ、と足元の血がふくらはぎに跳ねた。
もう冷えてしまってるそれは、誰のだったか……。
今日も今日とて、女の子の悲鳴を聞いて見に行ってみると案の定そこは血の海で、ナイフを赤く染めるのが大好きな方のフリッピーがいた訳なのだが。

「殺さない時は何やってるの?」

ちなみにオレの右腕にはまたしてもナイフが生えている。色々やってみた結果、手ぶらだった場合、最初の一撃を止めるのにはこれが一番効率がいい。勿論、全く痛くない訳ではないのだが、慣れるとそれ程でもない。どうもオレ(、、)は痛みに耐性があるようだ。ただ単に痛覚が鈍いだけかもしれないが。
金色の瞳が一歩、距離を詰め先程よりも派手な水音が鳴る。その黒い指抜き手袋に包まれた左手には勿論新しいナイフが握られていた。

「俺に殺さない時なんてねぇよ」
「それは嘘だ」
「嘘じゃねえよクソガキ!」

フリッピーが、その一人称を変えても逃げずに話しかけるオレの事を、ストーカー、とスニッフルズは言った。
断じてその自覚は無いのだが、こうして会う度にいくつも質問を投げかけるのはストーキングの一種に含まれるのだろうか。──初めて出会った時から、やっぱりこのギラギラと光る金色を見つめている時が一番この頭の中の白い靄に揺らぎが走るのだ。何か手掛かりにならないだろうかと話す内にそれが習慣になってしまった。
それで分ってきた事ではあるが、金瞳の(この)フリッピーは何を考えているのかが中々に分りやすい。ちなみに、今は苛々している。

「あ゛ぁあもう!お喋りは終いだ、死ねガキ」
「もうちょっと」
「ッるせぇよ!!」

……何と言うか、会話だけ聞いていたらまるでギャグだが。
とりあえずオレの本日はここで終わりだ。
こっちのフリッピーも大分話しに付き合ってくれるようになったなあとか、生きながらえる方法はないかなあ、とか、いつものように考えていると、それ(、、)は起こった。

そして話は冒頭へと立ち返る──



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