長編

□喧嘩
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昼下がりの公園。
いつか案内をしてもらった際には誰も居なかったのだが、こうして日常をいくつも通り過ぎてみれば、確かにそこは何も無ければ人の集まりやすい場所だった。何も無ければ、というのは、例えばその時間帯までに人口が著しく減るような事故や事件が起こらなければ、という意味だが。

──それはまるでドミノ倒しだった。

まず、オレが突進してきた女の子を思わず抱きとめる。そして後ろに居たトゥーシーが仰け反ったオレの肩を支えた。そしてオレの足元で地面に落書きをしていたフレイキーは、トゥーシーとオレとの間に挟まってうろたえる。その一連の動きがナッティを振り向かせ、そしてようやくジュースを飲んでいたカドルスは言った。

「あれ、ギグルスなにやってんの?」

大きな赤いリボンは、不貞腐れたように揺れた。




──そもそも、オレ達が何をしていたのかというと、最近公園に新しく出来たバスケットゴールを活用していたのだ。(結果、オレはこの球技をやったことがないらしい事がわかった。まず知識がなかった)その時居合わせていたのはカドルスとトゥーシー、そしてフレイキーとオレだ。そこに、ナッティがやってきた。

『スニフがッ!ナッティのこといぢめるッ!!』

何事かと思ったが、いつものように甘いものを禁止されているらしい。そこまではいつもの事だったが、ナッティは腰になにか小さな機械のようなものをつけていた。

『何だよ、それ』

トゥーシーも気づいたらしく、尋ねている。その横でカドルスはあまり興味がなさそうだ。

『スニフがつけた!ぜんぶ数字がうまったらおかしたべていいッて』

スニッフルズのことだからまたどんなメカを発明したのかと思ってみれば、ただの万歩計だった。カドルスはバスケットボールを抱えてゲームを始めたそうにしている。フレイキーはオレの隣に並んでナッティの腰元を眺めた。

『イチ、これって……』
『万歩計だね。カロリー消費したら食べていいって事だ』
『うん、そかも、知れないけど、これ……』

『十桁あるよ?』

フレイキーの言葉に、トゥーシーとオレは思わず『万歩』計を凝視した。

『うっわ、えげつな!要するに食うなってことかよ』
『……自作か』

カドルスはつまらなさそうにしている。ナッティは叫んだ。

『ぜんぜん数字いっぱいにならないッ!ナッティもうむりッ!!』

それはもう、一杯にはならないだろう。
スニッフルズは己の技術を変なところで使いすぎているような気がする。どうしたものかと思ったとき、ずっと黙っていたカドルスがとうとう口を挟んだ。

『ねぇナッティ、バスケしたらそれ一杯になると思うよ!』

多分、自分がバスケしたかっただけだ。



──そんなこんなで、オレたちはゲームを楽しんでいた。
ちなみにチーム編成はカドルス、ナッティ対トゥーシー、フレイキー、それからオレだ。平均身長が大体同じくらいになるように、トゥーシーが組み分けてくれたのだが意外なことに強さも拮抗していた。
まずカドルスとトゥーシーだが、この二人は普段駆け回ったりサッカーしたりしているだけあって普通にスポーツ少年だった。動きの要領がいい。しかしその一方で、フレイキーはあまり目立たない。運動音痴な訳ではないのだが、身長のデメリットが大きいようだ。フレイキーは年齢を考えても小さすぎるくらいだし。次にオレ。体力はともかく身体能力はそこまで低くない筈だ。ボールも取れる。だが、ルールをいまいち理解できていないというおまけがついている。そして──

「ボールいれれば勝ちッ?」

勝負に勝てば『万歩計』が埋まると、完璧に勘違いしているナッティは凄かった。
やがてゲームは終わり、ペナルティのジュース買いから帰ってきたトゥーシーとオレは、次のゲームでどう動くかを相談していたのだが……


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