Sleeep

□濁色ドール
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鬼ごっこをしようか。
僕がそう彼女に提案すると、なまえは不思議そうに首をかしげた。高校生にもなって鬼ごっこをするの、と。

「僕が鬼をするからなまえは逃げてね、少し経ったら探すよ。いい?」

有無を言わさずとしてなまえの背中を押すと複雑そうな笑顔を浮かべて彼女は歩き出した。この広い広い学園の敷地内で、僕は鬼になる。彼女を捕らえてもう僕からは離れられないようにちゃんと捕まえないとね。

10分経ったことを携帯で確認して一旦教室から離れようと一歩踏み出す。もうほとんど生徒がいない静かな校舎ではただ僕一人の足音しか聞こえなくて、それが何だか心地良い。

愛してあげたい、それでも彼女は僕を恐れる。
謙虚で清らかでつつくと折れてしまいそうなほど頼りのないなまえ。笑顔を絶やさない素敵な子だけれど、異性として付き合っている僕以外にも彼女は優しくて、弱い部分を見せる。
それが僕には理解できなくて許せなくて…そんな彼女が酷く憎い。ぎり、と腕に爪を立てると、肌色にうっすら赤色が滲む。こんな脆い腕じゃなまえを支えてあげられないなぁ。

「誉…?」
「あぁなまえ、見つけた。駄目じゃないもっと解りにくい所に隠れなきゃ」
「そんなことより腕、大丈夫なの!?血が出てる…」
「大丈夫だよ、痛くないし、すぐ治るよ」
「痛くないって…ばか!もうやめようこんなこと」

僕の腕にすがり付いて涙目になる彼女はとても愛らしい。こんな僕をそんなに心配してくれているんだね、嬉しいよ。
保健室に行った方が良い、と強く促すから
仕方なく二人で保健室に向かった。手当てをしたってこの傷は癒えないのにね?

「ねぇ誉、私はここにいるよ?こんな風にしなくても逃げないよ?」

先生はやっぱり不在だった。好都合のような気もするけれど。包帯を巻いて止血を終えたあと、なまえを後ろから抱きしめて羽交い締めにする。体温が伝わって鼓動が聞こえて、不安なんてすべて消えて洗われていくようで、安心する。

「なまえ、愛してるよ」
「?うん」
「本当に愛してるんだ」
「分かったって、誉どうしちゃったの」

どうもしないよ、大好きで大好きでたまらない、それだけだよ

「誉…?泣かないで、本当にどうしたの」
「……大丈夫、大丈夫だから、なまえ、愛してる」

虚ろな目から零れる涙を拭うと、誉はふにゃりと笑って唇を重ねてきた。こんなに近くに居てもあなたは寂しいと泣き、私を閉じ込める。
どんなに愛を捧げてもその闇から出てこようとはしない。いつも笑っているようで、実は泣いてるんでしょう?


「誉、好きよ、そんな弱いあなたが」

「大好き」

ごめんね、救ってあげられなくて。
ごめんね、ごめんね。





*愛を求めるごとに彼は壊れてしまっていたの






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