Sleeep
□甘すぎるタルト
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ふわっふわの生地に、とろりと乗ったクリームチーズ。さらにその上には紅く熟して美味しそうな苺が置かれ、仕上げには生クリームをトッピング。見ているだけで胃もたれしてしまいそうなほど甘たるいこのスイーツを、今から私はぺろりと平らげてしまうのだ。
「どうだ?美味いか?」
「うん!口のなかで蕩けるよ〜ほっぺた落ちそう…」
「あぁ、うまい堂の近くでたまたま見つけたケーキ屋で一番人気のケーキだったんだ」
安心したのか眉間のシワを直し、顔を綻ばせる龍之介は、本当に幸せそうだ。
食堂でお昼を終えてすぐに別腹は空いているか?なんて不格好な披露の仕方をした割には凄い出来のケーキで、わざわざ私の為に買ってくれたんだと思うと心が暖かくなる。
さくり、備え付けられたプラスチックのフォークをスポンジ生地に立てると一口サイズに切れる。それをまた口に運び、美味しいなぁと味を楽しんでいると龍之介と目が合った。
あれ、なんか変なことしたかな私、
「どした?」
「…。なまえは笑顔で食べていて…見ている俺まで何だか頬が弛む」
「それ褒めてる?」
「勿論だ。街まで買いに行った甲斐があって良かった。」
「ふふ、ほんとにありがとね」
笑い合ったところでふと龍之介の進んでいないスプーンに視線が向いた。
龍之介の食べているブルーベリータルトもとても美味しそうで、どうして食べていないのか解らないほど見た目からして絶品のタルトだ。
「ね、それ一口ちょうだい?」
「なっ……、わ、分かった。…ん、」
「あーーん」
丁寧に分けてもらい、恥ずかしがる龍之介にあーんをねだる。赤面するくせに嫌がらないのが彼の好きなところのひとつかも、なんとなく再確認。
「……おいひい。何で食べないの」
「なまえがあまりにも美味しそうに食べているのを見てると、俺まで満たされる」
「それズルい!私ばかり美味しい思いさせて太らせる気か」
「なまえはむしろ太るべきだと思うぞ、俺は。細いのも問題が生じるからな」
天然か!と言うより狙ってるのか?策士?
こういう男の子が増えるからぽっちゃり女子なるものが流行るのではないか。龍之介がそういうなら、太っても良い気がするけど。
「ほんとに太ったら責任とってよー」
私がそう返すと、当然だ。と自信満々に答える龍之介。それじゃ話の主旨が変わってない?
気付くとブルーベリータルトは二人でぱくぱくと食べ進めた結果、綺麗に無くなっていた。
来週の休みも街へ行ってこよう、と言っている辺りきっとまた龍之介の魔の手にハマるのだ。
…太ったら、なんて満更でも思ってちゃ危ないのかもしれない。明日から、朝のロードワーク量少し増やそうかなぁ。普段は真顔な彼の似合わない笑顔を見ながら、そんなことを考えた。
*甘くない恋は存在しない
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