Sleeep

□隣にはキミが
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「鈍感なのも初恋のせい」からの番外編です。先に本編を読まれると分かるネタもちらほら。







 窓から外を眺めると、そこには空を舞う桃色の花。風に吹かれて遠くまで飛んでいくその花は、春にしか咲かない特別な、゛桜 ゛という花だった。

『ていうかもう散ってるよコレ』
「あれ、なまえ、今日は翼と街に行くんじゃ無かったの?」
『天羽くんなら自分の部屋に閉じ籠って「ぬははー!これでそらそらの黒板キーキーが聞こえないぞー!」って嬉しそうに新しい発明進めてたけど?なにか?』
「あ、そう。だから怒ってるのか」

弓道場の出入口、ちょうど地面と建物の中間になる段差に腰を下ろして私は空を眺めていた。

ここに来るイコール梓に愚痴を聞いてもらうためだったけど、あいにく弓道部は今日も元気に練習だそうで。私の入る隙なんて1ミリも無いのでこうして外で待ちぼうけを食らっていた。

練習終わったの?と聞くと、宮地部長がなまえのこと見兼ねて休憩してこいって言ってくれたから、と。なんだやっぱり宮地先輩優しい人じゃん!(翼からは怖い人だって聞いてた)

「約束のこと本気で忘れてるの、翼は」
『多分ね!今朝だって私が部屋に行ってもなまえが早起きなの珍しいって言ってたからね』

もう良いんだ、どうせ私だけが何日も前からドキドキして私だけが楽しみにしてたんだ。
あの時買ってもらったネックレスまでしちゃって、馬鹿みたい。顔がじわじわと熱くなるのを感じて、指で目元を拭う。

「…別にそうじゃないみたいだよ?あれ翼でしょ」

ほら、と指を差した梓の目線を追うと、その先には走って私たちの方へ向かってくる見覚えがありすぎる長身だった。
……手には発明品があるし、間違いない。

「なまえ!…あれ、梓なんで居るのだ?」
「さぁ何でだろうね。喧嘩とかするのは勝手だけど僕を捌け口にするのは控えてよね、なまえ。じゃ」
『えっ!あ、梓!』

スッと立ち上がった梓はそう捨て台詞(?)を吐いて弓道場へ入ってしまった。ごめんね、ありがとう。梓には前から頼りすぎて本当に申し訳ない…それもこれも翼に原因がある気もするけど。

『…完成した?それ。』
「うぬ!これでそらそらの黒板キーキーの刑が……っ」

翼が話し終わるまでに、言葉は途切れた。私より何センチも高い彼に私からキスをするのは一苦労だけど、待たされたのだからこれくらい構わないでしょ?

「なまえ、寂しかったのか?」
『ま、まぁね。だって桜見に行く約束だったのに散りはじめてるし、来ないし』
「ごめんなのだ…ぬいぬいにも言われたし、もうなまえを待たせないからな!」
『会長になに言われたの?』
「内緒なのだー!!」

ぬははー!と元気よく翼は校庭目掛けて走り出した。もうお昼も過ぎてるし、お出かけは今度にしようかな。でも会長に言われたことって…

「なまえ!桜すごいぞー!」

無邪気に笑う翼を見ると、さっきまで泣きそうだった気持ちや怒っていたのも消えてしまうから狡い。きっと私はなにをされても彼には頭が上がらないだろう。大好き、なんて本人には恥ずかしくて言えないんだけど。



隣にはキミが


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会長に言われたことって何でしょうね…←
優希様、フリリクありがとうございました!大遅刻で本当に申し訳ないです。
書き直しなども大丈夫なのでなにかあれば拍手よりご連絡頂けたら助かります。

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