novel

□もう一度会えたなら 6
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「ベル。ほら、早くしてよね」
「…ん……」


いつものように名前を呼ばれ、なんとなくぼんやりとしていた意識を取り戻し、辺りを見渡す。
今は幹部のマーモンと暇潰しにTVゲームをしていた。他の大抵の幹部達とは、からかいと言う名の殺し合いに発展しがちで、基本的にマーモンしかオレの遊び相手にはならないのだ。ま、お仕事関連なら、たまーに楽しめる相手にも出会えるけどね。もっと言うこと聞く後輩とか、年の近い奴がいればいいのに。

「はい、僕の勝ち。約束通り、Aランク五回分ね」
「ちっ…マジかよ…」

脳に直接響いてくるような冷ややかな声とそのマスコットキャラクターみたいな外見に似つかわしくないがめつさに辟易しながら、液晶画面に大きく映った「K.O.」の二文字を睨みつける。先刻かましていた余裕から浅慮な提案をしてしまったことに思わず溜息をついた。小さな手にコントローラを持て余していたマーモンは、何回勝負してもオレに勝てずにいた。オレは段々と調子に乗って、「ししっマーモン弱っ!なんなら王子に一回勝つごとにAランクの任務一回分の賞金やってもいいぜ」などと言ってしまい、金の亡者のやる気に対してこれ以上ない着火の仕方をしてしまったのだった。それからは、連戦連敗。そのぽちゃついた手指をどうやって動かしたらそうなる、ってぐらい鮮やかで無駄のない動きで瞬殺される。
「もう一回やろうよ」
「もういいっつーの…」
項垂れていると、廊下を近付いてくる足音が部屋の前で止まった。
「う゛お゛ぉぉい!!!」
入り口の扉がぶち破るような勢いで開け放たれる。相変わらずスクアーロはうるさい。相変わらずの長い銀髪をレンジシ?(ジャッポーネってすごい)みたいに振り乱している。
「ベル!マーモン!!六道骸が来やがったぁ!話があるらしいからとっとと来ぉい!!!」
「うるせー!そんなに喚かなくても聞こえてんだよ!!」
耳を押さえながら(スクアーロの前では無意味に等しい行為だが)怒鳴り返す。
「…て、は?」
普段まず耳にすることはないだろう名前だった。思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。

六道骸。一応ボンゴレファミリーの霧の守護者である男。しかしボスの沢田綱吉の配下についているという風ではなく(他人のことは言えたもんじゃないけど)、事実上は骸とその仲間で構成される一種の独立機関のような集団から時折協力する姿勢や、敵対する姿勢まで見せるーと言った方が正しい。そもそも骸はマフィアを大層憎んでいて、復讐者の牢獄に入っていたような奴なのだから。そんな奴まで呑気に守護者にしている沢田は、変人ばかりのマフィアの中でも相当の変わり種だろう。
まぁ、オレはボスの方がいいな。強いし、かっきーし。それで、何故、骸は突然このヴァリアーを訪れたのだろうか。

「僕の今の標的がこの近くに居るものでね…作戦には中継地点が必要なのです。勿論設備は整っているほど都合がいい。なので、一週間程度、これをヴァリアーに預かって頂きたい。勿論、報酬や諸経費はお支払いします」

ボスの部屋に向かうと、六道骸が本当にいた。相変わらず会話に無駄な遠回しが多いし、驚くほど自分勝手な奴だ。なのでって。しかし、こいつがまさかヴァリアーに頭を下げるとは、余程の案件なのだろうか。そして、“これ”と思しき人物。斜め後ろには、整った顔立ちと頭を下げる六道骸に相反してかなり気怠そうな表情を浮かべている少女が立っていた。
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