novel

□もう一度会えたなら 9
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「いったいですねー。風呂場でナイフ投げるとかマジあり得ませんー」
「刺さってねぇだろっ」
「あ、すみませんでしたー、ミーの言葉が足らなかったですよねー。イタいのはアンタですー。しかも勝手に勘違いしといてー。野蛮すぎますよねー。ホントに7ヶ国語話せるんですかー?」
「話せるし!!つーかお前がそんなナリしてんのが悪いんだろオカマ野郎!!」
「外見だけはアンタには言われたくありませんー使い古されたモップ頭野郎」
「死ねよ」

風呂場で不毛すぎる会話の応酬を続けイラつきながらもどこかでそれを楽しんでいるような自分がいた。
なんだコイツ。王子にこんなこと言うやつ、初めてなんだけど。

屈辱的な立場に甘んじているのにも関わらず何故か上がりそうになる口角を抑えながら脱衣場を二人で出ると、フランはすい、とあっさり目の前を横切った。

「じゃ、さよならー」

色素の薄い髪から滴る水気をタオルで拭いながらひらひらと空いた手を振り、歩いていく。

「え…あ…」

その細い腕が自分から遠ざかっていくのがなんだかすごく惜しい気がして、咄嗟に掴んでしまった。ぼーっとした目に疑問の意らしいものを浮かべて振り返るフラン。…いや、オレ何してんだよ。
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