novel
□壊れたぬいぐるみ 2
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「ふあ、ぁ〜……ん」
退屈な授業で凝り固まった肩や腕をほぐしていると、廊下に、手にしている雑誌の両面を何度も何度も確認している細身の男子の姿を見つける。オレの一番の親友、喜多川翔太だ。
「お、櫂。いたいた。これ、今返して大丈夫か?ソーメンズの。サンキューな」
「あ…、これな!おう」
どんな時だって周りにいる人を元気付けてくれるはずの翔太の明るい声は、今日もやっぱりどこか翳っているようで。だけど、一番大好きなお笑いコンビがおちゃらけた顔で表紙を飾る雑誌を手渡してもらうオレだって、今楽しい顔が作れているのかわからない。
「櫂……」
ふと気づくと、俺の顔をじっと見て太めの眉を下げている翔太。
「どうしたよ?」
「あのさ、なんかあったら俺に言えよ?」
いつになく真剣な面持ちの親友は今日も俺の心を見抜いてるみたいだ。
「…辛いこと、一人で抱え込むのは、本当に壊れちゃうんだ。解決策なんてないけど…」
きっと、悩んでる人を見つけるのが上手で、ほっとけなくて声をかけてしまうのが喜多川翔太という人間なんだろう。たとえ、解決策がないことを分かっていても。
今は、その優しさが誰かと重なるようで…そして連なるようにさらにもう一人のことを思い出す。