novel
□もう一度会えたなら 2
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平坦だった声がほんの僅かに、震える。
「センパイ、どうしてミーは生きてるんですかー」
きゅ、と弱々しくオレの服の袖を掴み、幽かな、消え入りそうな声でー
「ひとりぼっちは、いやですー…」
「フ……フラン……?」
俯いていて、表情は分からない。だけど、フランがいなくなるなんて考えるだけで、気が狂いそうなぐらい怖くなった。
…ていうか、フランが、…好きな人が、自分はどうして生きているのか、って言うまで悩んでいるのを知らなかったオレは、最低だ……
翡翠色の柔らかな髪にそっと触れる。
「大丈夫だよ……オレはどんな世界になっても、お前のこと、見つけるから」
オレが殺し屋じゃなかったら、もっと上手くできたのかもしれない。それでも、できるだけ、優しい声を出した。
「………ほんと、ですかー?」
フランが顔を上げ、首を傾げながら訊いてきた。緑が渦巻き揺れる瞳を見つめながら、オレはもう一度言う。
「あぁ。絶対、『フラン』を見つけてみせる。…お前もオレのことしっかり探せよ?」
少し強がって、そんなことを言った。
「ベルセンパイ………」
「え?」
フランが小さい声で何かを言いかけた。でも、次の瞬間。
「なんちゃって」
フランはオレから少し離れ、ペロッと舌を出した。
「なっ……」
「騙されましたー?」
今さっきまでの運命に押し潰されそうだったフランの面影は何処にもなく。意地悪く顔を歪めた青年だけが、滑稽なものを憐れむような目をオレに向けている。
「ぶっちゃけミー、センパイ達のこと嫌いなんですよねー。ここから出てけてせいせいしますー。…あーでも、」
「ベルセンパイはミーのこと好きなんですよねー」
なんだよ、それ。
ドンッ!!
「ゲロッ」
思いきり、両手でフランを突き飛ばした。女子みたいに華奢な身体はいとも簡単に吹き飛び、派手な音を立てて壁にぶち当たる。さすがのフランも一瞬息が詰まったようで、少し顔をしかめた。
「な……にすんですかー」
「………………」
嘘だって?ふざけんな。オレは、
「どこにでも勝手に行けよ」
フランが無表情のまま、オレを見つめている。
「……もうお前の顔なんて見たくない」
「………そうですかー」
フランが、オレの部屋から出ていく。それすらも、ロクに見ていなかった。
ただ、大きなカエルの被り物だけが惚けたように口を開けてずっと床に転がっていた。