novel

□Tanti auguri!(仮)
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「師匠ー。ししょうーしーしょーおーあっ」
「うるさいですよ」

しゃくっという瑞々しい音を立てて丸く紅い林檎…の被り物に刺さる三叉の槍。

「おや、何時の間にそんな芸当ができるようになったのですか?」
「師匠がチョコばっか食べてニート生活送ってるあ痛い痛い無駄に幻覚使わないでくださいー」
「お前にだけは言われたくないですね」

うー…と聞き慣れた平坦な話し方よりも甲高く抑揚のある声を漏らしながら、崩れかけた被り物の形を涙目になりながらー幻覚でー補正する、この青林檎色の髪と目をした少年。
…僕の、小さな弟子。

「で…。僕に何か用ですか?」
「ふつー最初にそれ訊きますよねー。えっとですねー、師匠ってー、欲しいものとかあるんですかー?」

…珍しいですね。フランがこんなことを訊いてくるのは……。

「………欲しいもの、ですか?…ふむ……。…ボンゴレの、沢田綱吉の首…ですかね」
「うわー」
「! 骸様…それは、ダメです」

か細いながらも必死な声でそう言い、現れたのは─

「おや……クロームも一緒でしたか」

僕の……

「はい…。あ、あの、骸様っ。ボスの首…以外でお願いします……。もう少し、物、というか、私達で準……あっ」
「それ言ったら駄目ですよー」

ハッとして口を押さえるクロームと、小声で何事かを囁くフラン。珍しい組み合わせというのは元より…何がしたいのでしょうか。

「僕は…この世界からマフィアを殲滅することが何よりしたいので」
「そーゆー厨二発げ、むぐっ」
「フラン……それは多分、物凄く怒られる」
「おやおや…千種まで何の用ですか?」

本当に珍しいですね。ここ黒曜で騒がしいのは大概一人ではしゃいだり飛び跳ねたりしている犬ばかりなのに…。…そういえば、今日は犬が見当たりませんね。

「犬がいないようですが…お前達、どこに行ったか知っていますか?」
「えっ…えっと…そのっ……」
「ピューピュー」
「…………」

あからさまに動揺するクロームと誤魔化す(気もないような適当さですが)フランと、溜息をつきつつ眼鏡を指で押し上げる千種。


…本当に、意味が分からない。


…と。

派手な音を立てて気休め程度の外の光を室内に差し込む建て付けの悪い扉の前には、両手にいくつもの袋を提げている犬の姿があった。

「ふふーん、骸さんただいまびょーん!…あ、やべ」

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