短編

□不思議とスキなこのヒトトキ
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『…あの、毛利様?』

「…なんだ」

『あの…そろそろご飯の準備をしに行きたいのですが…』

「そんなもの女中にでも任せておけば良いだろう。」

『……私もその女中の中の一人なんですが…』




私の前で座りながら書物を読んでいる彼は、まさしく私が今おつかえしている“毛利元就様”


毛利様はこの中国の地を治めていて、かなり名高い武将の一人なのです。



そして、たまにですがこうして女中という立場である私なんかを部屋に呼んで、何をするでも無く数刻の間、ただ静かに書物に没頭されるのでございます…




以前このことを他の女中さん達に言うと「気に入られてるのよ〜」と、楽しそうに笑いながら言われました。



気に入られてる?この私が??

自惚れなんてそんな事はしない。



でも、毛利様は何かを考えて女中という立場の私なんかを呼ぶのでしょうか…?



不思議でたまりません…。







そして今日も静かに書物に没頭されております。




・・・正直に申し上げます。




キツイです。空気が重とうございますよ毛利様!!



そもそも、書物を読むのならば私はここに居なくてもいいのでは!?





そんな事を思っていると、おもむろに毛利様が口を開かれました。



「…お前は、ここに居るのが嫌か?」

『……へ?』




視線は書物に向けられたまま私に問いかけてきた毛利様。そのお姿は普段のお姿からは想像できないほど不安が滲み出て…否、この様な姿、普段から毛利様自身誰にも見せていなかったのだろう。



正直、ビックリです。






「…お前は、我と共に居る事が嫌かと聞いている。」



再度問いかけてきた毛利様に私は少し微笑みながら答える




『…いえ。嫌ではありませんよ』


「…ならば、良い…」




そう私が答えると一瞬だけ書物から視線を離し、チラッと私の方をみると

また書物の方へ視線を戻してしまいました。






















不思議とスキなこのヒトトキ





…何故、私はここに呼ばれるのかまだ分からないけど




たまにはこうゆう時を過ごすのも悪くない、かな?










――そう思う、今日この頃なのでした。







→あとがき

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