All/Others

□鴉
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「なぁ、いいじゃんー、俺たち今月ちょっとピンチなんだよね」

そう言って小柄な彼が顔を覗きこんでくる。
少女はじりじりと壁際まで追い詰められた。
ぐっと彼女は息を呑んで無言を貫く。

「ちょ、平助、変われって」

『平助』と呼ばれた彼を押し退けて、ガタイのいい青年が少女に向かう。

「・・・俺たち別に手荒な真似しようって訳じゃねぇんだよ、ちょこっとばかし貸してくんねぇかなってこと」

「・・・・」

「何? それとも身体に言うこと聞かせないと分からないのかな?」

笑顔に黒いものを含ませて、今度は整った顔立ちの青年が顔を出すと、少女の瞳に次第に涙が溜まっていく。

「おいおいおいおい、野郎共が寄ってたかって・・・。悪かったなぁ、口ほどには悪い奴らじゃねぇんだ」

変わって現れた長身赤毛の彼が優しく宥め始める。







一連の連携プレー。
小遣い稼ぎに彼らがいつも使う手だった。



「って、一君? どこ行くのさ」

「・・・・帰る。俺は最初から、このようなこと、気が乗らなかったのだ」

『はじめくん』と呼ばれた青年が一人、そんな輪の中から抜け出そうとしていた。

「今更、それを言う? 抜けるつもりなら、土方さんに報告しないといけないなぁ」

『土方さん』という名前を聞いて、一はビクリと肩を震わせた。

「次、一君の出番でしょ。悲痛な顔して『俺の話を聞いて貰えないか・・・』って言ってくんなきゃ」

端正な顔立ちの彼は、一の耳元に口を寄せ囁きかける。

「どうしても言えないっていうなら、土方さ・・・」
「分かった」

溜息を吐きつつ一はそう呟くと、皆に囲まれてる少女の元へと脚を向ける。

「素直じゃないんだから。どうせ逆らえないのにさ」

整った顔に微笑を浮かべ独白する彼の背後で、フッと空気が動いた。

「土方さん」

振り返りその名を呼ぶ。

「お前ら遅ぇんだよ。いつまで掛かってんだ」

「・・・一君が愚図るもんだからちょっと手間取っちゃって。でもほら、今、仕上げに入ってるみたい」

彼に促され、土方が目をやると、少女は既に財布に手を掛けようとしていた。

「しっかし、左之さんは相変わらず女の扱い上手いよね。でもって新八さんのあの身体を見てビビらない女の子はいないし。平助のあの顔で迫られると、脅されてるっていうより助けてあげたい気になるらしいよ」

余程楽しいのか、饒舌に喋りだす。

「で、一君はいかにも真面目って風貌だから皆疑わないし。ま、何より僕が最初に釘を刺してるから、そもそも逃げ出そうなんて考えるはずもないんだけど」

クスクス笑いながら話す彼に、土方はまるで耳を貸さなかったかのように、クルリと踵を返す。

「総司、ちったぁその口閉じとけ。行くぞ」

仲間たちも収穫を得て、少女の側から次第に離れて来ていた。

(あーあ、手なんて振っちゃって)

少女を見て、総司はまたクスリと笑う。





揃いも揃って真っ黒い服装に身を固めた彼らは、街の人たちからこう呼ばれていた。

―からす―



そして彼らは、また街へ。

次の『獲物』を求めて――――




もしもシリーズ第二弾。
もしも彼らがブラックな面々だったら。
一度書いてみたかったんです。。
キャラ崩壊ごめんなさい・・・





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