竜の丘

□第三章
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第三章 出陣


翌朝早く、彼等は各々準備を済ませ、街の西端に位置する岩場へと集まっていた。

「わりぃわりぃ、遅れちまって」
ヘースケが最後に陣に加わるべく走ってくるのが見える。

「遅いじゃない。何やってたのさ」
「だからごめんって。今日父ちゃんが発つもんだから、昨晩は遅くまで話聞いててさ」
早速非難するソージに、ヘースケは両手を合わせた。

「親父さん、もう発つのか」
「次はいつ帰って来れるか分からねぇんだろう」
「何なら今日は俺らのことは気にせずゆっくりして来ていいんだぜ」
皆の言葉にヘースケは慌てて首を振る。

「俺だけ除け者になんてしないでくれよな!父ちゃんとはしっかり話したし、こっちもかなり気になってんだからさ!」
「分かってるって。冗談だよ」
「・・・にしてもソージ、またしっかり持ってきたな」

じゃれるヘースケとシンパッチを横目に、サノがソージに目を向けると皆も彼の背後に積まれた剣の山に目をやった。

「いいんだ。どうせ売り物にならないんだから、誰も困らないよ」
ソージはガランガランと音を立ててそれらを岩場に並べてゆく。

「売り物にならないって、何だよそれ?」
「結構いい代物に見えるけどな」
「全部僕が創ったからね。僕の作ったものは気に入らないんだよ、あの人たちは」

ソージは父親たちから認められない不満にあからさまに眉を潜めた。
しかし他の者たちはそんな彼に構うことなくわやわやと剣に魅入る。

「また腕を上げたな」
「ほんとすげぇよ、ソージは」
「俺これ超気に入った!」
「おわっ!それ目ぇ付けてたのによ!」

皆から褒められるとまんざらでもないといった表情でソージは鼻の頭を掻く。
思い思いの剣を携え、一向は西の端に見える森へと足を向けるのだった。

道中もくだらない話で盛り上がり、さながら遠足気分といったところか。
この先に待ち受ける運命など露知らず。
やんちゃな彼等は非日常な冒険に、今はただ心躍らせていた。




(なぁなぁっ!せっかくだし、何か竜とか出ないかな)
(はぁ?何それ?)
(あーわくわくすんなぁーっ!)
(はしゃぎすぎだよ、ったく)



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