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□浅葱色の夢
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――――四月十九日。
宇都宮城は、激しい戦火にさらされた。
戦場には弾丸が飛び交い、兵士たちの断末魔がこだまする。
先陣隊の指揮官、土方歳三は自軍の兵士たちを振り返り、独白とも言えるような指示を出した。

「・・・・このままじゃキリがねぇな。そろそろ敵陣に突っ込んでもいい頃か」
「て、敵陣に!?」

それを聞いた旧幕兵の兵士たちが唖然とした様子で言い返す。

「何を言ってるんですか! 向こうは銃を持っているんですよ!」

しかし、土方は取り立てる様子もなく、

「奴らが持ってるのは、薩長が使ってる新型の銃とは違う。百間も離れりゃ当たらねぇし、命中精度も低い。それに、」
フッと自嘲を込めた響きで事も無げに告げる。

「弾の一発や二発当たったところで、すぐ死ぬわけじゃねぇさ」
「そ、そんな無茶な・・・・」

土方の言葉を聞いた兵士たちは口々にどよめき、辺りは騒然となる。
しかし、土方だけは冷めた目で兵士たちを見回すと、

「おまえら、ここに何しに来たんだ? 戦争しに来たんだろ? だったら・・・、」

表情を崩すことなく言い放つ。

「死ぬ覚悟くらい持ち合わせてるはずじゃねぇか」


――――その刹那。


土方は確かに、風に乗って無数の何かが髪を撫でたのを感じた。
まるで、
桜が舞い落ちてきたかのような。。。


 
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