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□未知との遭遇
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その日は久々暇な一日で。
俺は特に行く宛もなく、その辺プラプラしてた。
何の気なしに道の端の垣根に目をやったその時。

「・・・・・」

一度視線を前へと戻し、もう一度そろそろと『それ』を見る。

何度か目を瞬いてみても。

(んー)

その光景は変わらなくて。

(ヤバいな、俺。疲れてんのかも)

ふらふらと足取り危なく屯所へ帰る。



「・・・・・け、・・・・・すけっ、平助っ!」
「あ、何?左之さん」
「何?じゃねぇよ、呆けやがって。新八におかず取られてんの気が付かないなんて、おめぇらしくねぇじゃねぇか」
「あ、そっか、ごめん新八っつぁん」
「いやいやいやいや、お前が謝ってどうすんだ。一体どうした?何かあったのか?」

左之さんと新八っつぁんが顔を覗き込んでくる。
自分の手元を見下ろして、いつの間にか夕餉の時間になってたことに気が付いた。

あれ?帰ってきてから俺何してたんだっけ?

「おい。本当に大丈夫か?」
目の前で振られる新八っつぁんの手を掴む。

「わ・・・・・、笑わねぇ?」
「笑うようなことなのか?」
「んー、て言うか・・・・・」
「まぁとにかく話してみろって」
「うん。あのさ・・・・・、」

一度ゴクリと唾を呑む。

「・・・小さい、おっさんがいた、んだ・・・」
「・・・・・は?」

目を丸くして声を重ねる二人。
俺はガシガシと頭を掻く。

「いゃだからさ・・・・・」
俺は今日、町中で自分の見た光景を話した。

「垣根の下に小人がいた・・・・・!?」
コクリと首を縦に振る。

「小人ってか、小さいおっさん?みたいな。・・・・・本当だって!」
二人はぽかんとした後、堰を切ったように吹き出して。

「あーもう!やっぱ言うんじゃなかった」
「悪りぃ悪りぃ・・・・・。で、その『小さいおっさん』とやらはそこで何してたんだ?」

俺はまだ涙を浮かべてる左之さんを一度ジトリと見やってから、仕方なくまた口を開く。

「何って・・・・・。座ってたり、何か草抜いてたり・・・・・」
思い返しながら話してると、やっぱり腹を抱えて笑ってる二人が見えて。

「もういいよ!」
あぁやっぱりこんな話するんじゃなかったと心底後悔する。
自分でも信じられないのに。

「信じてくれなくたっていいよ! でも見たもんは見たんだ。しょうがねぇじゃねぇか」

俺がそっぽ向いてぶつぶつ言ってると、ポンポンと頭を叩かれた。

「いゃ、お前の話を信じてないわけでも、馬鹿にしてる訳でもないんだ」
頭に置かれた左之さんの手が、温かい。

「ただ、ちょっと面食らってよ」
「・・・・・うん」
「それと・・・・・」
「?」
「何かお前らしいなって思ってな」

ニコニコ笑う左之さんと新八っつぁん。

「何だよ、それ。意味分かんねぇよ」

いつまでも可愛いままでいろよ!なんて言われて、何だか気恥ずかしくなって左之さんの手を振り払う。

何だよ、やっぱり馬鹿にしてんじゃねぇか・・・・!




未知との遭遇


それは無垢な心を持った人だけが出逢える奇跡。



「誰にも言うなよな・・・・・っ!」
「分かってるって!」




翌日。

巡察の間中、小さなおじさん探しをさせられたのは、言う間でもないのだった。ちゃんちゃん。



(ちゃんちゃん。じゃねぇよっ!
 平隊士には冷やかされるわ、総司はしつこいわ、一君には本気で心配されるわ・・・・・。
 くそぅ、この前のがようやく下火になってたってのに。
 あぁ何だか目から汗が・・・・・(涙)
 あの口軽野郎共、今度逢ったらタダじゃおかねぇ!)



何か平助は本当にそういうの見えそうだと思ったんで。それだけ(笑)





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