戦国無双 夢部屋2 (越後)

□別れ
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景虎は北条幻庵(養父)から「千葉采女の娘が行方不明らしい。その娘と上杉謙信が恋仲だという噂もある。上杉家にその娘が匿われておらんか調べよ」といった内容の密書が送られていた。
その為、何度も景勝を誘い綾御前の館へおとずれていたが、勝手に館を歩き回る事は許されず情報を得る事ができなかった。
それに、謙信自身も伊勢姫の行方を暇さえあれば昼夜問わず、捜索に出掛けていた。
景虎は「(謙信公自身が伊勢姫の行方を知らないのだから綾様の館におるはずがない。居るならとっくに謙信様が捜索でお出かけになられるはずがなかろう。)」と思い極めていた。
そして、北条幻庵の元に景虎の密書が届けられたが結局、その内容は期待外れに終わり幻庵は千葉采女の城、平井城を攻める事を決意した。

「伊勢姫が見つからぬとももはや関係ない。平井城を攻め、奪還すれば良いだけの事よ」

幻庵は北条氏政に会いに行き、平井城奪還の計略を密かに立てた。

そして月日が経ち、ついに伊勢姫のお産の時がやって来た。
綾御前は他の者に伊勢姫の部屋への出入りを硬く禁じた。
伊勢姫は汗を流しながら苦しそうに布紐に手を握り口布を噛み締めた。

「姫様しっかり!もう少しです!」

沙夜は一生懸命伊勢姫に声を掛け励ます。それに応えるように伊勢姫も懸命に踏ん張り、お腹の子を出そうとする。

「頭が見えてきましたよ!」

助産婦がそう言うと、沙夜は嬉しそうに伊勢姫の手を握る。伊勢姫も顔が少し綻び再び踏ん張る。

「おぎゃ〜おぎゃ〜」

遂に伊勢姫は子を産んだ。沙夜はまるで自分の事のように大喜びをして布に包まれた赤ちゃんを助産婦から受け取った。

「元気な女の子ですよ。」

助産婦はそう言って赤ちゃんを沙夜へ渡した。
沙夜は赤ちゃんを伊勢姫の見える所へ一緒に寝かせてあげると伊勢姫はとってもホッとした顔をして赤ちゃんを眺めた。
出産を無事終え綾御前が伊勢姫の居室を訪れ赤子を見にやって来た。伊勢姫は子供を産み終えたら明日、明後日には清国へ向かう予定だった。

「まあ、何と愛らしい赤子。二人に似た美しい子に育つでしょうね。遠くへ行ってしまうのがとても残念でなりません…。」

綾御前は別れを惜しむように言うと、突然慌ただしく忍びの段蔵が現れた。

「綾様!大変でございます!」

「騒々しい…。一体何事ですか。」

「先ほど平井城が北条に掌握されたとのご報告が…」

「「!?」」

「父は…父は無事なのですか?」

「どうなのです?段蔵。」

「千葉采女殿は北条に捕らわれ今の所無事ですが…恐らく、伊勢姫様を捕える為の囮に使うのではと…」

伊勢姫は顔を真っ青にして今までの自分の愚かな行動に後悔した。

「私の所為で父上が……。」

「姫様……」
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