TOV

□お疲れ様の労いを
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今日で何日目だろうか。
誰もいない、当然明かり一つ灯していない真っ暗な部屋は、シンとした無音がうるさく感じる。
星喰みを退け、世界から魔導器がなくなった今、騎士団長となったフレンが為すべき事は山のようにあり、文字通り寝食を削って仕事に打ち込む毎日が続いていた。
いつも気が付けば空は明るみ、天頂に登り、辺りを朱く包み、夜の帳を降ろしている。
そして、今日が終わり、また今日が始まる。
息を吐く暇もなく、次から次へと持ち込まれる問題、決裁を要する書類は部屋の主よりも存在を主張し、所狭しとあちらこちらで高い紙塔として連なっている。
それを見て見ぬ振りで執務室から繋がる私室へと足を向けた。
やらなければいけない事だとわかっている。他の誰かに出来るものではないことも。なによりも、自身がやりたいと思っている。誰よりも大切な人との誓いと希望、そのために。
誰もが笑って暮らせる平和な世界。悪しき者が正しく罰せられる世界、正しい秩序を。その為の土台を、半身とも呼べるユーリが築いてくれた事を無駄にしない為にも。
けれどふと、思ってしまう。


疲れた―……


フレンとて人の子である以上、いくら気を張っていようとも疲労は蓄積されていく。
それでも自ら休もうとしないのは、一度張った琴線を僅かでも自分で緩めてしまうと、そのままぐずぐずに崩れていきそうな気がしているからだ。
実際はそうでもないかもしれない。限界を迎えている心身は取るに足らない休息を糧に、更なる無理を重ねるべく無理矢理にでも酷使させてくれるはずだ。それは他ならない、ただ気力という原動力のみで。
寝室に入り、後ろ手に閉めた扉にもたれ掛かる体勢のまま、ぼんやりとベッドを眺めること数秒。時間が経つにつれ徐々に、けれど確実に覚束なくなった足取りで吸い寄せられるようにベッドへとたどり着いたフレンは、その重装備の何一つとして外さないままに、糸が切れた人形のようにポスリとシーツに身を沈めると、そのまま意識を闇へと落とした。
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