二次創作小説第二倉庫

□ビターチョコは二人分
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「なんでそんな結論になるんですか!?」



聞き覚えのある、渋く、
それでいてよく通る声。

しかしその声に、いつもならあるはずの
柔らかさが無い。

前方から突如聞こえてきた叱咤に、
見代が思わず足を止めたのは・・・

放課後も日の暮れはじめた、
下校途中の事だった。








『ビターチョコは二人分』








冬は町の色がコロコロと変わる。

クリスマス。
終われば今度はお正月。


面白い物好きな彼女としては、
冬はけして嫌いな季節では無いはずなのに。

今の彼女に、2月の町はただ、
イタズラに心を乱すだけの。
何故か、落ち着かないものに見えて
しかたがなかった。



「だからね、みっちゃんと違って私達は
 今必死なのよ」


「そうそう。クラス替えで離れちゃうかもしれないし・・・
 って、そんなのは嫌〜!!」


目の前で熱く語る子に、
勝手に頭を抱えて涙声になるクラスメート。

その両方を面倒臭そうに眺めながら、
クラス1美貌をはなつ少女は
「わかった」、と立ち話をしていた廊下から
教室へと一人足を運ぶ。

そんな彼女に気を悪くした様子も無く、
少女たちは引き続き手作りチョコの話題で
盛り上がり始める。


何が「みっちゃんと違って」よ。


想いながらも口には出すことは無く。


「遊びに行かない?」の見代の一言を、
その言葉通りに捕え「そんなヒマはない」、と
首を横に振った少女たちは気づかない。

「チョコレートも見たいし」と
言いそびれた見代のタイミングの悪さにも。


誰にも言えない強がりにも。



「良いじゃない、会いたい相手が
 いつも傍にいるんだから」


ぽつり、と呟かれたひとり言は
チャイムの音にかき消され・・・
誰の耳にも届くことは無かった。




彼女の想い人はいつも遠い所にいて。

会いたいから、で会える相手ではない。


大宇宙神、なんて言う人になってからはもっと、
大好きなヒーローに会える機会は激減していった。


それでも、私は大丈夫、と彼女は思っていた。

遠い星の幸運の英雄は、TV越しのニュースで、
たあいの無い放送で。

いつも笑顔のその表情は、
どんな言葉の束よりも、彼女の気持ちを温め、
力づけていたから。


宇宙中、皆に向けられた笑顔は、
彼女にとっては特別で。

自分だけに向けられたもののままだ、
と思っていたから。






16歳になった当日。

迎えに来ると思っていた彼が来なかったのは、
つまらなかったけど。

それでも、突然おひさまのような笑顔で、
あたり前みたいに迎えに来て。
自分は大喜びでついてゆく。


そんな未来を信じてた。

自分たちのハッピーエンドに変更など
起こるわけが無いのだから、と。










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