□負けるに決まってんじゃん!
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事の発端は、何気ない夕飯から始まった。


日向家家事当番で、夕飯の準備をしたらちょっとはりきりすぎて作りすぎちゃったハンバーグ。

どうせだからと、地下に引き籠もりがちのクルルと、どーせ味気ない軍用食を食べてるギロロを無理やり誘って、みんなで食卓を囲んだ。


そう。そこまでは良かったんだけど。


夏美殿や冬樹殿に美味しく出来たねって褒められてちょっと謙遜しつつ浮かれてた我輩。

そのまま隣りにいたギロロにも美味しい?なんて聞いたら、我輩のよく知る幼なじみの顔で優しく笑って言ったのだ。


「本当に美味いぞ。お前の飯は好きだな」

「ケロッ」


ギロロに褒められるなんて!と、もうそこで有頂天になった我輩は、そのままのテンションでギロロに抱きついたのだ。


「ギロロってばよく分かってんじゃん!!我輩、毎日作ってあげてもいいでありますよぉ〜!お嫁さんになってあげようか〜?」

「阿呆。調子に乗るな。誰が貴様なんぞ嫁に貰うか」

「ケロケロケロ〜!んもー照れちゃって、ギロロったら可愛いでありま…っ」


ゾクッと、背筋が凍るほどの怒気と殺気が入り混じった視線が突き刺さった。

視線のもとは、ギロロの隣に居た陰険陰湿黄色メガネ――もとい、クルル曹長。


あ、ヤベ。調子に乗りすぎた。死ぬ。


頭で、冷静な我輩が言った。

ぎこちない動きでギロロから離れるも、クルルの突き刺すような視線からは逃れられない。

ギロロも冬樹殿たちも気付いていないのか、急に大人しくなった我輩を不思議そうに見ている。


「…へえ、ほ〜〜〜〜ォ?」

「ゲロッ!助けて冬樹殿ォっ!」

「えっえ?どうしたの軍曹っ?」


黄色の悪魔がものすげえ怒ってる!ヤバイヤバイ我輩殺されちゃう!!


「…クルル?」


ようやっとクルルに気付いたギロロが、クルルの頬を触る。

それによって、幾分和らいだクルルの怒気と殺気。


ナイス!ナイス赤ダルマ!


「く」

「クルル。ついてるぞ」


あ、赤ダルマは怒気には気付いてなかったのか。

ていうかクルルの頬についたご飯粒取って食べるとか、どんだけラブラブしてるでありますか。見ろよ、クルル真っ赤じゃん。

甘いわ。甘過ぎるわお前等の周り。

コッチは命が危険に脅かされていると言うのに!


「クルル?」

「っ!ば、何すんスか、先輩。言ってくれりゃ自分で取りますから」

「ああ、すまん」


ああでもこの流れはいい感じじゃない?

このままクルルが甘い空気に流されて、さっきの我輩のお茶目も流してくれたら…っ。


「…隊長ォ」

「ハイィッ!」


ああですよねダメですよねああああゴメンナサイ!!


「料理対決しようや、隊長。負けたら過酷な実験に付き合って貰うぜェ?クーックックックック〜!」

「ヒィイイイッ!」


暗に負けないと言うクルルの発言。


ああもう!我輩のばかちんがああああっ!






審査員が赤ダルマなんて、負けるに決まってんじゃん!






「先輩先輩。クルルカレー美味しい?」

「ああ。お前の作るカレーが一番好きだ」

「くくっ良かった」

「(いちゃつくならどっかに行ってよもう!)」






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