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□好きじゃない奴となんか出来るか阿呆
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ギュッと抱き締めて、恋人の匂いを肺いっぱいに吸い込んだ。
…ああ、落ち着く。
更に顔をすり寄せれば、ビクッと肩を揺らして身を捩る恋人。
可愛いな、と思わず笑った。
抱き締められたり、キスをしたり、好きだと言われたりするのは、どうやら苦手らしい恋人。
苦手、と言うよりは、慣れなくて恥ずかしい、と言ったところか。
「せ、せんぱい」
「ん?」
「あ、の…離して、くんねェ……かな…」
「いやだ」
「う…くぅ…」
いつもは嫌味や酷いことを散々言うくせに、こうやってしまえば途端にしおらしくなる。
そんな所も可愛くて、頬にキスをすればまたビクッと肩を揺らした。
クルルを恋人にしたのは、もう1ヶ月くらい前だった気がする。
いつもみたいに嫌がらせをして来たクルルから逃げ回っていたら、うっかりキスをしてしまったのだ。
目の前にいたクルルを押し倒すようにして。
慌てて退けようとしたら、誤ってあらぬ場所を触ったらしい。
瞬間、クルルは見たこと無いくらい真っ赤になって泣き出したのだ。
そんなクルルを見たら、それまでただ鬱陶しく思ってた後輩が一瞬にして愛おしく感じるようになってしまい、結局クルルが泣き止むのを待てずに深くキスを繰り返し、俺から告白をした。
夏美の事なんかすっかり頭から抜けていて、それよりもクルルが堪らなく愛おしくて。
結局クルルは戸惑いながらも受け入れてくれて、晴れて恋人同士になったのだが。
「……クルル…」
「っ、や、だ」
キスをしたいと思っても、クルルは真っ赤になって拒絶する。
体を重ねるなんて言語道断。
一度無理矢理手を出そうとしたら、あろうことか大泣きされてしまった。
…俺も男だ。好きな奴としたいと思うのは当然なのだが、クルルが泣くのは見たくない。
…だが、そろそろ限界ってもんがある。
「…クルル…」
「ひっ!や、やめ…ろっ」
顔じゅうにキスをすれば、顔を真っ赤にしてビクビクと体が震えるクルル。
ギュッとしがみつく手が、可愛くて仕方無い。
…もう我慢なんか出来るか。
「んっ!?…んんっ、んンむっ…ふあっ!?」
唇を塞いで、軽いキスを交わしてから無理矢理舌をねじ込んだ。
嫌だと暴れるかと思いきや、面白いくらい硬直するクルル。
怖がっているのかもしれないと僅かに良心が浮上して来るが、欲がそれを跳ね除けた。
体に手をいやらしく這わせれば、クルルは思い出したかのように暴れ出す。
「ふっ!く、あっ!」
「……ん」
「んんっ!ふ、ぅうっ」
深く深く口付けて、言葉を塞いでしまう。
真っ赤な顔でとうとう泣き出したクルルを見て僅かに怯むが、無視を決め込み先に進む事にした。
クルルの体は、俺なんかよりずっと柔らかい。
まあそりゃあ、鍛え方も戦法も違う訳だから、体格差なんか明らかなわけで。
胸や腹を行ったり来たりしながら、その感触を楽しんだ。
時々強弱をつけて掴んでみたりすると、ビクッと跳ねるクルルの肩。
クルルは両手で手を退かそうとするが、力が全然入らないのか全く効果がない。
いい加減キスが苦しくなってきたようだから、取り敢えず唇を離し手も退けてクルルの様子を見た。
頬を染め涙を流しながら肩で呼吸しているクルルに、どくりと下半身が熱くなる。
もしクルルが嫌だと拒絶しても、抑えられないなと頭のどこかでぼんやりと思った。
これでは強姦だと、思わず苦笑する。
「…はっ、はあ…っ」
「……クルル…」
「…っ…せん、ぱい…は、さあ…っ」
「ん?」
「…な、んで…したがるの…?」
「…なんで?」
意味の分からない質問だ。
だがクルルは至って真面目らしく、少しだけ不安そうな顔をする。
「…っ、ただのっ…性処理、なの…っ?」
「…は?」
「だっ…てっ先輩…今まで、夏美に…こんなこと、しなかったじゃ、ねぇかっ」
「………」
「俺の事が好きって……性処理として…って事…?」
息切れしながら、また涙をぼろぼろ流し始めるクルル。
…ああもう、ダメだ。可愛い。
「…そんな訳あるか、馬鹿者」
「っ」
「クルルが好きだから、シたいと思うんだ」
「…っ、ウソくせェ…っただヤりたいだけにしか…っ」
「……クルル…愛してる」
「!」
「…クルルを見てると…抑えられなくなるんだ」
「…っ!?」
「…クルル…」
「……せんぱい…っ」
好きじゃない奴となんか出来るか阿呆
クルルじゃなきゃ、ダメなんだ