□でも、
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地球侵略定例会議。

ドロロ以外の全員が集まって、ああでもないこうでもないと意見が飛び交うものの、遂にギロロが吼えた。


「だから、そんな生ぬるい作戦じゃ侵略なんか出来ん!!」

「だあってドロロがあんまり過激なのだと許可してくれないであります!!」

「ドロロドロロと!アイツの意見で何回作戦をボツにする気だ!?」

「だってだあってドロロがあっ!」

「貴様いい加減に…っ」


遂にギロロが銃器を取り出す。

ヤバイ!と思ったのも束の間、ギロロがふとある一点を見たまま止まった。


視線の先は、いつの間にか寝ていたらしいクルル。


「…ね、寝てるでありますな…あはは…」

「ぐっすりですぅ」

「っていうか、睡眠時間?」


ギロロを見れば、クルルを見たまま溜め息をついていた。

…よく分かんないけど、怒りは静まったっぽい?


「…つーか、よくこんな騒音で寝てられるでありま…ケロ?」

「伍長さん?」


ぴょんっと椅子から飛び降りて、部屋を出るギロロ。

程なくして、毛布を持ってきたギロロはそれをクルルに掛けた。

唖然とする我輩達に気付かぬまま、ギロロはクルルの頭を撫でて優しい顔をする。


前ならば確実に黒こげにされてたであろうクルル。

そうならないのは、ギロロとクルルが恋仲だからなのかもしれないが。

…それにしたって、この変わりようは目を見張る物がある。


「…まあ、とにかく。こんな生ぬるい作戦はだな」

「えええちょっとギロロ!」

「なんだ」

「なんでクルルはお咎め無しなんでありますかっ!」

「は?」

「寝てんじゃん!作戦会議中よ!?」


お咎め無しはないっしょギロロ!

有り得ないと抗議する我輩に、ギロロはしどろもどろになりながら言う。


「……クルルは、ほら、毎回お前のくだらん作戦のために色々作ってるから、疲れてるんだろう。だから寝かせてやれ」

「そっ、そりゃそーかもだけど…ってくだらん作戦てナニヨ!?ちょっとギロロ!」

「やかましい!クルルが起きるだろうがっ!」

「地球侵略定例会議中に寝るなっつーの!」

「…ん…」


ギャーギャー騒ぐと、僅かに身じろいだクルル。

ガンッとギロロに頭を殴られ、無理やり黙らされた。

…あーもう、クルルに甘過ぎんじゃないのもうっ!


「…クルル」

「……くー…」


完全に寝ていると確認をし、ホッと息を漏らすギロロ。

…本当にもう、ムカつくくらいのバカップルなんだけど。

見ろよ、モア殿もタママも開いた口が塞がらないって感じじゃん。


「…ギロロ先輩って…クルル先輩のどっこが好きなんですかぁ?」


未だ唖然としたまま、タママが口を開く。

…確かに気になってはいたけど、聞く勇気はなかったよ我輩。


「どこ…って……可愛いだろう」


ぼそり、と赤くなりながら呟くギロロ。

タママはギロロを信じられないといった顔で見た。


「可愛いとは…随分かけ離れてる気がするですぅ…」

「っていうか、理解不能?」


まったくであります。


「き、貴様らは分からんでいいっ!」

「分かりたくはないでありますが…あ、でもクルルの寝顔はまだ可愛い…」


ジャキン、と銃器の音がした。

恐る恐る顔を上げれば、物凄い怖い顔したギロロが銃を突きつけていて。


「ぎ…ギロロ…?」

「見るな」

「見るなって…」

「クルルの寝顔を見るなと言っている」


…うわあ…嫉妬かよ。

よっぽど好きなんだなあと、溜め息が出た。


「…ハイハイ。じゃあクルル連れて行っていいでありますよ。会議はまた今度ネ」

「…ふんっ」


ギロロは銃をしまって、優しくクルルを抱き上げる。

お姫様抱っこなんて…クルルが起きたらそれこそ再起不能になりそうだ。

クルルを大事そうに抱えながら部屋を後にするギロロ。


「…どうよ、あのバカップル」

「…甘いもの好きなボクでも…ちょっと胸焼けしそうですぅ…」

「でもちょっと羨ましいです…っていうか、理想恋愛?」

「…ラブラブでありますからなぁ…」


なんか、ちょっと寂しいかな、なんて。


いっつも側に居てくれた、頼りになる幼なじみ。

いっつも悪ふざけに付き合ってくれた、後輩。


二人とも、我輩から離れていっちゃうんだなあ、なんてさ。





でも、幸せそうならまあいっか!








寂しいけどさ、我輩、二人を見てると嬉しくなるでありますからな!






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