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□キミと暮らしてみたいんだ
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「クルル」
「……」
応答がないクルルを振り返って見たら、座布団の上でパソコンを開いていた。
「……」
「………」
…パソコンなんぞされたら、会話出来んではないか。
時計はまだ10時を少し過ぎたくらいで、まだまだ時間はある。
「……はあ」
――"夫婦らしく生活をしてみたい。"
そう、クルルに持ち掛けたとき、クルルは露骨にいやな顔をした。
暮らしたいとは言ったものの、正直な話クルルと二人で過ごしたかっただけというか、暮らしたらどんな感じなのかという好奇心からの発案。
結局、クルルの新発明の実験体となるという条件で引き連れた、556の住むアパート。
「(……まあ、パソコンは予想通りだがな)」
本当はくっつきあいながら愛を語り合ったり、ちょっと重火器なんかの語り合いをしてみたり、少し甘い感じを想像していたんだが、現実なんてこんなもんだろう。
仕方無いなと、持ってきていた武器カタログを広げた。
最新型は流石に値が張る。
今の給料じゃとてもじゃないが買える代物ではない。
ローンを組んでも、多分完済するのに随分掛かる。
……稼ぎがよければ、クルルとの新居くらいすぐにでも買うんだがな。
「……はあ…」
クルルの方が給料が高いというのは、やはり情けないと思う。
……ケロロに昇格について相談してみようか。
「……先輩、それ欲しいんスか?」
「まあ興味はある………っぅわクルル!?」
いつのまに隣に居たんだコイツは。
…というより、俺が気を抜きすぎなのか。
「クク…最新型ッスねェこれ。これくらいだったら造りますよ?有料ですけど」
「……別に、いい」
「……あっそう」
少しつまらなそうな顔をするクルル。
…そんなに造りたいのか、はたまた金がほしいのか…。
「……なァ先輩」
「ん?」
「なんで……俺のこと頼らないんスか…?」
少し泣きそうにそう呟きながら俯くクルル。
…可愛いな、と思いながらも、何故そんな顔をするのかと疑問が湧いた。
「クルル?」
「…先輩…俺の発明品がろくなもんじゃないから嫌だって思うのは分かるんスけど……」
「え」
「…先輩の欲しいもの、造りたい」
「……クルル…」
可愛いこと言いやがって…。
だがこれ以上コイツに頼るのは、やっぱり嫌だ。
少しくらい、俺が負担できるものが欲しい。
「…クルル、お前に頼りたくないのはお前の発明品を信用していないからではない」
「……く…」
「…クルル、お前の発明品なんぞ俺には必要無い…俺には、お前が居ればそれだけでいいんだ」
「…なにそれ…」
ずりぃ、なんて真っ赤な顔で呟くクルル。
…やはり、コイツのために出来ることを最低限負担していたい。
「……やはり相談するべきか」
「は?」
「なんでもない。こっちの話だ。…それより、パソコンはもういいのか?」
「……」
「うぉっ!?」
突然、クルルが抱き付いてきた。
何事だと思ってクルルを見れば、赤い頬が見える。
「…お、おいクルル…?」
「………」
「…な、なんだ?どうした?」
「………」
「…クルル…?」
答える変わりに抱き付く腕に力が込められた。
…まさか、甘えているんだろうか、クルルが。
「…く、クルル…お前……構って欲しかったの……か…?」
「………」
力の込められる腕。
それが、クルルの肯定を指すものだと気付いて、思わず口元が緩んだ。
「…可愛いな」
「だろ?クック〜」
「ああ、可愛い」
「……く?…え、あっ」
抱き付き返しながら押し倒すようにして、クルルに覆い被さる。
僅かに身を堅くするクルルの頬にキスをすれば、クルルは更に真っ赤になった。
「……先輩って本当肉食系スよねェ…」
「お前は草食系なんだったな。ちょうどいいじゃないか」
「………昼間っからはヤんないッスよ」
「なんだ、つれないな」
「…ばーか」
でもキスなら許す、と呟いたクルル。
…ああ本当に可愛いな、コイツ。