□悪魔の誘惑
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「ひっ、ぁあっ」

「…クルル」

「はぅっああっ」

「……クルル」

「いっ…ひあぁ!」

「ええいっ!やめんかその声!」

「にょっ!」


べしっと丸い頭を叩く。

ギロッと睨み付ければ、クルルは涙目をしながらニヤリと笑った。


「…ククッ、せんぱぁい顔真っ赤ですよぉ」

「きっ貴様が変な声を出すからっ!」

「だぁってえ、痛いんだもん」


クルルから離れて、もう一度頭を叩く。

別に今、やましいことなどは一切していない。

軍事訓練の事前運動、前屈をしていて、俺はその背を押していただけ。


「…それにしても貴様、体が堅すぎるぞ」

「そう言われましてもねぇ」

「ほらもう一度!」

「にゃ、あんっ!」

「へっ、変な声を出すなと言っとるだろう!」

「だっ、て、痛…っんんっはぅああっ」

「…っ貴様、いい加減に…!」


クルルの顔を見て、うっと言葉に詰まる。

情事を思わす声、表情。

それに顔が熱くなる。

勤務中、こんな所で枷を外すわけにいかない、のだが。


「せん、ぱぁい…っ」

「…っ!」


ぐらぐら揺れる理性。

これだけ煽られて、何も出来ないなんて生殺しだろう…っ!!

キスぐらい良いんじゃないか、もう押し倒してしまえと悪魔が囁いた。

ダメだ、いかん、今は…今は勤務中だ…っ!!!!


「ひっ、ぃた!?ちょ、そんな押すな…ふっ、ぅう…せんぱ、い…やだぁ…っ」

「く…クルル…っ」


プツンと、何かが切れた音がした。

…勤務中なんてもう知らん俺は悪くない!


「ぁんっ!?ちょっ、テメどこ触っ」

「ギロロ〜!!」

「うわあっ!?」


ケロロが現れたのは、今まさにクルルを襲おうとしていた時だった。

慌ててクルルを突き飛ばし離れてケロロを振り返れば、泣きながら腕を引っ張ってくる。


「うわあああんギロロ助けてえええええ!」

「なっ、なんだ!」

「お昼に持ってきた宇宙お好み焼きが暴れ出し…っ」


ハタと、ケロロは止まった。

視線の先は、クルル。

変に突き飛ばしたからか、妙な体制で、しかも赤い顔で涙目。

荒い呼吸に、小刻みに震えるクルルを見て、ケロロがぶあっと顔を真っ赤にして俺を睨んだ。


「…ギロロ、お前…我輩達が見てないからって…!」

「いや違っ!未遂だ!!」

「未遂って事はしようとしたんじゃん!!!!」

「いやっ、だがクルルが悪…っ」

「クルルの準備運動遅いからまさかとは思ったけど…勤務中でありますよ!?」

「だっだからそれはっ」

「軍曹さぁんっ!」

「隊長殿!!」


どがんっと派手な音を立てながら、タママやドロロが走って来る。

背後には宇宙お好み焼きの姿。


「ゲロォ!忘れてたであります!!!!」

「チッ…ドロロ!タママ!コンビネーションでいくぞ!」

「承知!」

「ハイですぅ!」


銃を転送し、連射をする。

何とか三人で仕留めて、ふうと息を吐いた。


「何とか終わったか…」

「ケロォ……って!我輩の話はまだ終わってないであります!」

「うっ!?」

「タマ?どうしたですかぁ?」

「どーしたもこーしたもないであります!ギロロ伍長!軍事訓練前にお説教でありますよ!」

「ぐ…っ」

「クククー!…先輩、軍事訓練中は俺様に近寄るなよなぁ…」



ああもう、俺の馬鹿がっ!







悪魔の誘惑







訓練が早く終わればいい、なんてな。



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