□とある日の夜
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夜。時刻は、既に日付変更線をとっくに回っていた。

作業をしてて、フッと集中力が途切れたときに浮かんだ大好きな人。

会いたいな、なんて柄にもなく思ったから、行動に移してみたりして。


「…ギロロ先輩、寝てる…?」


寝てるなら寝てるで、別に勝手に隣に寝るから構わないけれど。

そう思ってテントを覗けば、予想とは裏腹に返ってきた声。


「…ん?…クルルか?どうした、こんな夜中に」

「クククっめずらし、起きてたんだ」

「どうも寝付けなくてな」


それは更に珍しい。

起き上がった先輩の隣に座って、ぴたっとくっつく。

びくりと跳ねた肩にこっそり笑ったら、先輩が不服そうに睨み付けてきた。

宥めるように更に擦り寄れば、困惑したように真っ赤になる先輩。


「っ…クルル…?」

「んー?」

「…………ど、どうした?」

「なんか先輩が急に恋しくなっちゃってェ…テントで寝ても良い?」


びくり、と肩が震えた先輩は顔を真っ赤にしながら俺から距離をとる。


「なっ、ななななな…っ!?」

「…嫌ならいいんだぜェ?サブローと寝るから」

「は!?」

「サブローが、さっき泊まりに来ないかって言うからよォ」


勿論ウソだけどな。

因みにサブローの所に行けと言われたら、言葉通りにサブローの家に行ってやるつもりだ。


「じゃ、俺サブローのとこ」

「待っ、クルル!!」

「くっ!?」


先輩から一歩後退りした瞬間に、痛いくらい腕を捕まれた。


ちゃんと引き留めてくれるんだ、なんて喜んだのも束の間、乱暴に引っ張られて先輩に組み敷かれる。

急な展開に、思考回路は思いっきりフリーズした。


「え…せんぱい?」

「クルル…行くな」

「……」

「…行くな…クルル」

「…クク…了解」


なんだよ、そんな泣きそうな顔しやがって。


面白い顔だな、なんてからかってやろうとした時だ。


「んんっ!?」


突然塞がれた唇。

しかも優しいキスじゃなくて、噛みつくような荒々しいキス。

どきりと胸が鳴った。


「んっ、は…ぁ!?」


うっすら開けた唇から、暖かいものが入り込んだ。

その瞬間に、ぞわっと背筋が粟立って、ぴりぴりと痺れるような感覚が駆け巡る。

くちゅくちゅと、慣れない感覚とともに水音が響いた。


「ぁ、んふっ、はぅ…っ」


口内を熱い舌が舐め回して、時折舌を絡められては吸われる。
どうも甘い声が出てしまい、羞恥で顔が赤くなった。

だんだん頭がボンヤリとしてきて、生理的な涙が零れる。


「は…ぁふ…くるし…ぃっ」


腕で突っぱねてみてもビクともしない。


「んっふぅうっ」

「……クルル…」


ぼやけた視界で捉えた先輩。


色っぽくて、かっこいい顔。


「…クルル…好きだ」


…ああもう、そんな声で言うなよ…ばか。


「…んっ…」

「……クルル……いいか?」


俺の頬を撫でながら、優しい声で問い掛ける先輩。

なにが、なんて訊くほど空気が読めないわけじゃない。

自由な手を伸ばして、先輩に触れた。


「…クク…甘えん坊さん」

「うるさい。最初に甘えてきたのは貴様だろうが」

「可愛いでしょ?」

「……阿呆」

「クククッ…先輩、もっかいキスして?」

「…ああ」


再び重なる唇。


今度は、優しいキスだった。

















ああ、この夜がずっと続けばいいのに。







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