□貴方が笑えば
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なんで、うまくいかねえのかな。

喜んでほしくてやったのに。
笑ってくれると思ったのに。


出しっぱなしになってた先輩の武器を、整備がてらちょっと性能良く改造して先輩に渡したら、ひどく冷たく、殺気立って怒鳴られた。


"俺の物に勝手に触るな。"


その言葉が、どうも頭から離れなくて。

あんな先輩の冷たい目も、殺気立った気配も久し振りに見たからか、お得意のイヤミも出て来ないくらい頭の中が真っ白になった。

反論すら出来ず、ただ先輩を見つめていたけれど。

…酷く悲しくて、ショックで。

先輩が「出てけ」って言うまで呆然としていた。


逃げるようにラボに帰って、気付いたら涙がぼろぼろと零れて止まらなくて。


嫌われた?
捨てられる?

先輩、俺から離れていっちゃうの?


…いやだ、そんなの。


「…ギロロ…先輩…っ」


どうしたらいい?
どうしたら先輩、笑ってくれんの?


……どうして俺、嫌われることしか出来ねえんだろ。


「……っ」


ごめんなさい
謝るから
お願い
嫌いにならないで。

離れて、いっちゃわないで。


震える体。
今会いに行ったら、またあの目で睨まれるのかね?
怖い。怖くて、足が竦んでやがる。

ああもう、謝りに行きたいのに。
動けよ、ばか。


ぼろぼろ零れ落ちる涙は、拭っても拭っても止まらない。


ああ、ああもう…先輩、ギロロ先輩…っ。


「クルル…すまん」

「!?」


ふと後ろから抱き締められる身体、聞き慣れた声。


「…せんぱい…?」

「ああ、俺だ」

「…っ!ギロロ先輩…!」


バッと先輩にしがみつくように振り返った。

優しくあやす先輩に、更に涙腺が刺激される。


「ふ、ぅ…ごめ、ごめんなさい、せんぱい、きらいになんないでェ…!」

「なるわけないだろ。…すまんクルル…俺もカッとなって…すまん」

「く…ぅ」

「…クルル……愛してる…」


囁かれた言葉に、ぼろぼろと涙が零れ落ちた。

しばらくしがみついて泣いて、ようやく落ち着いた頃に恥ずかしさで顔が熱くなる。


「……落ち着いたか?」

「…最悪……」

「可愛いぞ、泣いて俺にすがるの」

「趣味悪いなオッサン。っつーか忘れろばか」

「きらいになんないで、だろ?」

「ばっ、うるせ、ばかっ!もういい!離せっ!」


じたばた暴れてみても、ギロロ先輩はびくともしない上に強く押さえつけてくる。


「…さっきは、怒鳴って悪かった。…いたずらしたんだと思って……勘違いしたんだ…すまん」

「…っ」

「すまん…有難うな。大事に使わせてもらう」


優しい声に、またうっかり涙腺が緩くなる。

グッと奥歯を噛み締めて耐えながら、先輩の背中に腕を回した。


「……せんぱい」

「ん?」

「…性能良くなっただろ?」

「ああ」

「……嬉しい?先輩」


先輩はゆっくり顔を見合わせ、優しく笑ってくれた。











「先輩笑った顔、可愛い〜」

「お前には負けるぞ」

「……ククッ。ばぁか」



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