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□愛し方は人それぞれ
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もう夏か、なんて幾度目かの地球の季節を感じながら、庭でいつものように銃や弾薬やらを整備していたときに、奴は来た。
「ギロロせんぱぁい」
「…なんだ?」
気持ち悪いくらいの猫なで声を発した恋人。
こういった声を出すときは、なにかを企んでいる証拠だ。
関わりたくないと思いながら振り向けば、奴はやけに上機嫌で。
なにか嫌な予感がすると身構えたのは、もはや経験上とでしか言えない。
「あのよォ」
「……なんだ」
「ククッ、なに身構えてんスか先輩」
「気のせいだ」
虚勢を張りつつも、背中は冷や汗だらだら。
何をされても反撃出来るよう、こっそり銃を手に取った。
「ギロロ先輩、今日は天気が良いッスよねェ」
「…そ、そうだな」
「天気が良いのは、そろそろ俺たちケロン人的には厄介ッスよねェ」
「だからなんだ」
「先輩は雨より晴れてる方がお好き?」
「だからどうした」
「最近シてませんよねェ、セッ」
「なっばっ馬鹿!?」
慌ててクルルの口を押さえて日向家を見る。
ケロロたちには…聞こえていないようだ。
「…貴様…いったい何が言いたいんだっ」
「んァ?別に、ヒマだから先輩に会いに来ただけ」
「そんな理由で来るなっ!ケロロのところにでも行ってろ!!」
「おや、お邪魔でしたか」
「当たり前だ!」
「ククッ、そっスかァ、そりゃお邪魔しました」
「帰れっ」
くつくつ笑うクルルにイライラと苛立ちが芽生え始める。
やれやれと肩をすくめる動作をしたクルルは、ふと何かを思い出したかのように小さく声を漏らしたあと、また同じように笑った。
「そうそう、俺、先輩大好きなんですよォ」
「…………………知っている…」
だからなんだ。
「あ、っていうか先輩のロボット、今日整備しちまうけど良いッスか?」
「貴様用件があるなら先に言わんか!」
「くくくーっ」
心臓に悪い前置きなんかしやがって。
ああくそ、普段ならちゃんと用件だけを言って帰るくせになんなんだ今日は。
もういい。
適当に相槌を打って帰らせよう。
「んで、良いッスか?」
「ああ構わん。しばらく使う予定もないしな」
「ついでにフライングボードも」
「ああ勝手にしろ」
「あ、あと先輩の事365日24時間監視してても良い?」
「好きにしろ」
勝手に監視してたらいいだろう……が……
……って
「いやちょっと待て!?」
「ククッ、許可頂きましたァ」
「許可してない!」
「したじゃん。なんなら録音、聞くぅ?」
「なっ!?」
なんて奴だ!と銃口を向けたら、奴はニヤニヤと笑い出す。
それに思わず怯んだ俺は、次に言われる言葉に絶句するしかなかった。
「軍人たるもの男たるもの…二言はねェよなァ?しかも恋人兼上官への約束事だしィ?」
「…!」
軍人。上官。恋人。
その言葉に思わず構えていた銃を降ろして気をつけしてしまう。
そんな俺の行動は肯定ととられたようで、奴は満足そうに口元を上げていた。
愛し方は人それぞれ
「だって先輩が何してるか気になるんだもん」
「だからって24時間はヤメロ」
「え、いーじゃんケチ」
「ケチじゃないっ!」