□そんなのズルイ
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この間の敵襲で、思わず叫んだ先輩の名前。

階級も、先輩もつけない、名前を。


思い出しては顔が真っ赤になって、ひどく恥ずかしくなる。


必死だった。

先輩を死なせたくなくて、早く離脱してほしくて。

だからつい、呼び捨てにしちまった。


先輩は怒っちゃいないようだけど、顔を合わせるのが気まずくてなるべく接触をさけていた。


…のに、あの人はのこのこラボにやってくる。


「クルル」

「ちゃんとノックボタン押せよなァ?乙女の部屋にずかずか入りやがって…デリカシーの無い人ねっ」

「なにが乙女の部屋だバカモン」

「ククッ…何用ですかァ?先輩」

「……」


相変わらずの仏頂面で見下ろしてくる先輩。


動いたと思ったら、両頬に添えられる赤い手と、近い顔。


「…なっ」

「呼び捨ては、もうせんのか?」

「…っ!?」


かあっと一気に熱くなる顔。

そんな俺を見て、先輩は優しく笑った。


「嬉しかったんだがな?初めてだろう、呼び捨てなんて」

「あ…う、るせ、ばか」

「格好良かったぞ、あの時のお前」

「あっあの時は、必死で」

「急いでタママに連絡したそうだな、俺達を助けろと」

「うっ、うるせってば、先輩」

「…違うだろ、クルル」

「んんっ」


優しい口付け。

次第に深くなるそれに、息が続かなくなる。


「ん、ふ…っせ、んぱ」

「……」

「は、ふあ、んっく、るし…っ」

「……」

「……っぎ、っ…ギロロ……っ」

「ん…」


ようやっと離れた口付けに、危うく酸欠で死にそうだった脳と肺を正常にするため荒い呼吸を何度も繰り返す。

涙目になりながら先輩を睨めば、満足そうに笑っている先輩。


「…っは、セクハラ」

「クルル」

「っ、も、絶対呼ばねえ!」

「何故だ?」

「う…っるせ!」

「クルル、好きだ」

「な、だ、だからなんだよっ」

「愛してる」

「そんなの言われたって、呼ばねえ!」

「クルル」

「くっ…うぅ〜っ」


抱き締められて、これでもかってくらいドキドキして。


耳元でまた、名前を呼ばれて愛を囁かれた。

















「…た、たまにだったら、呼んでやる」

「クルル、可愛いな」

「うるせ、ばか!」





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