□ヤキモチ妬かせんな
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ふりふりと動く、黄色のまるいもの。

可愛いそれは、柔らかくて気持ち良いのを知っている。

触りたい。


「(…ダメだ、いかん)」


目をそらしたいのにそらせない。


――……音楽が、止まった。


「ちょっとギロロ!なにボーッと突っ立ってるでありますか!?」

「え!あ、…すまん」

「んもーちゃんとやってよね!」


侵略予算かかってんだから!と突きつけられた雑誌に書かれた、"創作ダンスコンテスト"の文字。

優勝すれば、優勝賞金が授与される。


「軍曹さぁん、ボクちょっと疲れちゃったですぅ」

「確かに、先ほどから踊り続けて些か疲れもうしたでござるな」

「オッサンのせいでリテイクし過ぎだっつーの」

「…すまん」

「あーもう、しょうがないでありますなぁ…んじゃ10分休憩」

「わーいですぅ!」


どこが疲れちゃっただ、元気じゃないか。


「……おい」

「!あ、ああ、なんだ?」


突然聞こえた低い声。

不機嫌とばかりのオーラを纏ったクルルが、俺を睨んでいた。


「…あんた、踊ってるときどこ見てたか正直に言いな」

「…!」


どきりと嫌に心臓が鳴った。
冷や汗がひっきりなしに流れ落ちる。


「…い…いや…別に…」

「……」

「……………すまん、お前の…その…………尻を…」

「ヘンタイ」

「見たくて見たわけじゃない!不可抗力だ!目の前にあったら…っ」

「ヤらしい目で見るのはあんたくらいだぜェ」

「うぐっ…!」


言い返せない。

そりゃあ確かに、そういう目で見たのは事実だ。


…好きな奴の尻が目の前にあって、可愛く振ってたらそりゃあ見るだろ。


「なになにー?エロだるまがどうしたのー?」

「ケロロ貴様っ」

「助けて隊長!ギロロ先輩ってばクルたんのお尻見てハアハアするのぉ!!」

「してない!!!!」

「うーわあ、最低でありますなギロロ伍長」

「だからしてないっ!」

「クルル、お嫁に行けないっ」

「おーよしよし、可哀想に」


クルルの頭を撫でるケロロ。
ケロロに抱き付くクルル。


ブチッと、血管が切れた音がした。


「いい加減にしろ貴様らァアアア!!」

「まあまあギロロくん!」

「離せドロロ!離せえ!」

「落ち着くでござるぅっ!」

「これが落ち着いてられるかァアッ!」


無理やりドロロを引き離そうとして、ドロロは俺を無理やり押さえようとして。

ジタバタしてるうちに足がもつれて、派手に二人で倒れ込んでしまった。

ドロロを下敷きにしてしまったせいもあり、痛みはさほど無かったが。


「す、すまんドロロ」

「い…いや…大丈夫でござ…る!?」


瞬時に感じた、鋭い視線。

顔を上げたら、クルルが無表情で俺たちを見ていた。


「……クルル…?」

「なにやってんだ先輩。ドロロ先輩にまでセクハラ?」

「違っ」

「だったら早く退けたらいいんじゃねェの?」

「…ク、ルル…」

「早く退けってば!」


クルルの叫びに、急いで互いに離れた。

見たこと無いくらいのクルルの怒りにたじろいでいると、クルルが俺に勢い良く抱きついてくる。

あまりに唐突過ぎて、目が点になった。


「…クルル、おい…?」

「……ばか、ヘンタイ」

「なっ!?」


ぎゅっとしがみつくようなクルルは、ドロロに顔だけを向ける。


「……先輩は、俺のだ。触るんじゃねェ」

「……クルル…」

「…ギロロ先輩の…ばか」


小さな言葉。

嫉妬されたのだと分かって、じわじわ顔が熱くなる。


「…あー…すまん、クルル」

「……」

「………好きだ。愛してる」

「…当たり前だ、ばか」















「どーでも良いけど…我輩たちいる前でやめてくんない?」

「うっ見るな!」

「無茶言うな…ですぅ」





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