□ふるえるココロに優しいキスを
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『貴様は本当に嫌な奴だな』


――せんぱい?


『余計なことばかりしやがって』


――余計な、こと?…俺、なにかした?


『なにが愛してるだ、気持ち悪い』


――…え?せんぱい?



『おまえなんか、大嫌いだ』













































「…っ!」


バッと飛び起きた。

どくどくと血が回る。


ああ、見たくない夢だ。

昔からよく見ていた、夢。


「…せんぱい…っ」


がたがたと体が震える。


――『おまえなんか、大嫌いだ』


「…ギロロせんぱい…っ」


怖い。

嫌われたら。

怖い。怖い。


先輩、お願いだから、嫌いにならないで。


俺を、好きだって言って笑ってくれよ。


――『なにが愛してるだ、気持ち悪い』


「――…っ」


もしかしたら、正夢になるかもしれない。

どうしよう。先輩。先輩居ないと、俺はもう駄目なのに。


「…っ」


気がついたら、先輩の携帯に電話をしてて。

こんな真夜中に電話なんてするなって、怒鳴られるかもしれないのに。


先輩の声が、聴きたくてたまらなくて。


しばらくのコール音の後に、電話の通じる音がした。


『……誰だこんな時間にっ!』

「…っ」


あ、ヤベエ。

手震えて、声出ない。


『…おい?イタズラなら切るぞ?』

「ぁ…っ」


いやだ、だめだ。

切らないで先輩。

ギロロせんぱい…っ!


『……クルルか?』

「ふ、ぇっ」


あ、くそ、変な声出やがった。最悪。


『…どうした…?』

「あ、…っ」


ダメだ、ちくしょう、喋ろうとしたらえずきばっかり出やがる。


『おいクルル!?大丈夫か!?』

「ぅっ…えぅ…っ」

『今からそっちに行くから待っていろ!』


ぶつんと強制的に切られた通話。

それからすぐさま、寝床として改造した押し入れを勢い良く開けられた。


「クルルっ」

「せ、んぱ」

「どうした!?何故泣いている!?」

「く、…うぅー…」

「クルルっ」


素早く上に登った先輩が、俺を強く抱き締めた。

先輩の匂いがして、更にぼろぼろと涙が零れ落ちる。

しがみつくようにして泣けば、先輩があやすように頭を撫でた。


「大丈夫だクルル、俺がいる。だから泣くな」

「にゅ…っ」

「大丈夫だからな」


優しい声色に、だんだん落ち着いてきて体の震えも止まり始める。

それでもまだ、不安が無くなった訳じゃない。


「せん、ぱい」

「どうしたクルル」

「俺のこと、好き?」

「…クルル?」

「…好き…?なあ、答えろよ…っ」


怖い。ああもう、また体が。


「…当たり前だろうが。ばかもん」

「…ギロロせんぱい…っ」

「愛してる。誰よりも何よりも…俺にはお前が居ないと駄目なんだ」

「…っきらいになったり、しない…?」

「する訳ないだろうが。誓っても良い。…俺はお前だけを一生愛す」

「…ギロロせんぱいぃ…っ」

「……クルル」


宥めるような、そんな優しい甘い口付けをされた。

そんな口付けにまたぼろぼろ涙を流して、先輩は優しく笑う。


「…クルル…愛してる」

「…俺も………先輩が好き」

「……ん」


再び触れた唇。

甘い口付け。


俺はもう、震えては居なかった。

















不安で不安でたまらなくなるときには


必ず側にいてやるからな



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