□臆病者へ とびっきりの愛を
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嫌われることに慣れて居るのだと笑ったら、先輩はひどく悲しそうな顔で俺を怒鳴った。


だけど俺は、どうして先輩が怒るのかも、なんでそんな顔をするのかも全然分かんなくて。


「クルル」


先輩に名前を呼ばれて、見つめ合って、キスをした。

よく分からねえけど、名前を呼ばれたり、キスをするたびに俺は泣きたくなる。

もっともっとって、先輩に縋りたくなる。


…へんなの。


俺、どうしちまったのかな。

先輩が居ないと不安になるし、先輩が誰かと楽しそうにしてると寂しくなるし、先輩が、頭から離れなくて。


先輩に好きって言われるたびに嬉しくて、先輩に愛してるって言われると泣きたくなる。


でも、どうせいつかは、先輩も俺を嫌いになるんだろうな。


だから嫌われるまで、先輩としたいこといっぱいして、先輩の隣でずっと笑っていたい。

これってワガママ?

でも良いじゃん。いつか失われる愛なら、今だけのワガママくらい許してよ。


「…クルル」

「ん?」

「……クルル、俺が好きか?」

「ク?」

「俺は、俺はお前が好きだ。愛してる。……だがお前は…いつになったら俺を見てくれるんだ…?」

「……ギロロ先輩…?」


どういう意味だよ。

俺だって、先輩が好きだし、愛してるのに。


「…俺は…クルル、お前に一生を捧げるくらいの愛がある」

「!」

「…クルルは……俺をどれくらい愛してくれているんだ?」


…一生?

それはない、おかしいだろ。

どうせあんたは、俺を嫌いになるのに。


……でも……本当?


「…俺、は……」

「……」

「…ギロロ先輩を…信じたいけど…怖いし…」

「…怖い?」

「……ギロロ先輩…俺のこと…本当に、嫌いになったりしない……?」

「…!」


嫌われることには慣れてるはずなのに。

何故だろう。

先輩にだけは、嫌われたくなくて。

怖くてたまらない。

愛されることに慣れたら、嫌われることが怖くなる。

一生の愛なんて、本当に、あるの?


「…クルル…」

「……いつか、先輩も俺を嫌いになるなら……俺から、もう離れて…」

「ふざけるなっ!」

「っ」

「嫌いなんかになるわけがなかろう!?俺はお前から離れるつもりもない!」

「…せんぱい…」

「二度とそんな事を言うなバカモン!」


…先輩、なんで泣いてんの?

なんで俺も、泣いてるわけ?


「…どうしたら、お前は俺を信じてくれるんだクルル…」

「……さァ…?」

「…さあって…」

「………分かんねえもん…こんなの…先輩が初めてだから、分かんねえんだもん……」

「…クルル」


天才と謳われた脳をもってしても、どうしていいのか全然分からない。

愛されることに慣れる方法も、信じる方法も、調べた事なんかないから。


「……好きだクルル…愛してる。俺から離れるな。俺はお前が居ないと生きていけん」

「…オーバーじゃね?」

「本心だ。…なんなら、貴様の得意の発明で、俺の心を覗けばいい」

「……今はそうでも…」

「この先ずっと、一生お前を愛すると誓う。…誓いを破ったら、殺してくれても構わない」

「そ…そんな事、しないッスよ…」

「ならケロロやドロロに頼む。俺がお前を幸せに出来なかった時は、殺してくれと」

「やだ、もう、いいよ先輩、分かったから」

「…クルル」

「分かったからっ…だから…死ぬとか言うんじゃねェよ…っ」


俺のためにそんな事言わないで。

もう充分、伝わったから。


「……ギロロ先輩…俺も、先輩が好き」

「!」

「…本当に、本当に先輩を愛して…んっ」


重なる唇。


ああやっぱり、なんだか泣きたくなるわ。













信じたい。信じて良いかな。

この愛と、貴方との永遠を。




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