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□まあ結果オーライ?
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「クルルってさぁ、なんか案外戦ったら強いでありますよね」
突然隊長がそんなことを言い出すもんだから、俺はいじっていたパソコンから顔を上げる。
ガキや隊長、それからギロロ先輩の顔が俺の方を向いていた。
「そういや、クルル先輩って強かったですぅ」
「だしょだしょ?クルルって戦えたんでありますなあ」
「ククッ。戦闘兵じゃ無いとは言ったけど、戦えないとは言ってないぜェ」
「参謀でのバックアップとかメカ作りのイメージがどうもねえ」
そんなことを隊長が笑いながら、興味も薄れたのか早々にガンプラを組み立てる。
ガキはとっくに興味が削がれたのか、お菓子に手を伸ばしていた。
また何でもなかったかのように、各々好きな時間が始まるのだと俺は思っていた。
ただ一人、興味津々な顔をしている奴さえ居なければ。
「そう言えばクルル、お前ビームサーベルも銃も案外使えていたよな」
「…あ?」
「白兵戦が出来るのか?」
「……あー…」
しまった。厄介な奴に聞かれたもんだ。
もう、目が違うもんな。
向けられたこと無いくらいの、興味を示す視線。
「ちょうど近々訓練合宿をする予定だったから実力を知りたいと思っていたんだ。どうだクルル。俺と一戦交えてみないか?」
うっわ、すげえ楽しそうな顔。
戦えないとは言ってないと確かに言ったけど、だからってアンタみたいな奴と戦ったところで…。
「(…いや、でも待てよ)」
ギロロ先輩は、強い女が好きだ。
だから夏美に惚れた。
それはちょっと前の話で、今は俺を好きだなんて言ってくれるけど。
俺は女じゃないけど、でも、強いって認識されたら俺をもっと好きになってくれるかもしれない。
「…良いッスよ」
「よし」
先輩がもっと俺を見てくれるなら、それくらい俺だって。
戦い方は頭にある。
先輩の癖、行動パターンは把握してる。
伊達に参謀やってないってところをアピールするチャンスだ。
「ギロロ先輩」
「なんだ」
「俺が勝ったら、俺様のお願い聞いて?」
「は…ハア!?」
「簡単なお願いだからよォ」
ちょっとだけ、ちょっとだけでいいから、二人の時間が欲しいの。
…最近全然、そういうのないからさ。
「負けたら先輩のお願い聞いてやるからよォ。…どうよ?賭事ある方が燃えるだろ?」
そう言って先輩を見れば、しばらく考えたあとに小さく頷いた。
「良かろう。どうせ貴様には負けんだろうからな」
「おやまあ、言ってくれるじゃねェの」
「ふん。戦闘兵じゃない貴様に負けるほど弱くはないわ」
「ククッ…負けたときの言い訳でも考えてなァ」
「貴様こそ、約束はきっちり守ってもらうぞ」
ばちばちと火花が散る。
かくして、俺とギロロ先輩の戦いの火蓋は切って落とされた。