2
□紅葉のように
1ページ/1ページ
好きだと感じた。
いつからだったかは分からないが、いつからかあの憎たらしかったハズの後輩が愛おしく感じた。
プライドが高く陰湿陰険、ひねくれ者で不真面目で、嫌な奴。
なのに本当は優しくて仲間思いで…寂しがり。
知りたいと思うほど隠されていた本当の奴が見えてきて、知れば知るほど愛おしくなる。
昔の俺は、いったい何処を見ていたのかと後悔したくなるほどに愛おしい。
「クルル」
後ろから抱き締めた小さな体。
僅かにビクついた後輩の頬は、朱に染まっている。
「……なんスか、甘えん坊」
「好きだと改めて実感していた」
「………あっそ」
更に赤みを増した頬にキスをする。
僅かに固まるクルルの頬は、より一層真っ赤に染まった。
「…セクハラはよくね〜なァ」
「……そんな事を言われるくらいなら、本格的に触ってやるが?」
「ヤメロふざけんな」
睨まれ、手をつねられた。
痛い訳ではないが、仕方ないとクルルを放してやる。
時計を見て、もうこんな時間なのかと少々寂しさを感じた。
ここに長居は出来ない。
「…そろそろ戻る。夏美が帰る時間だからな」
今日は芋を焼く約束をしていた。
寒さが身に凍みるこの季節は、芋が一番だと言っていた夏美。
相変わらず食欲の秋だと微笑ましく思いながらも、俺は寒いからこそクルルと二人で暖め合いたいと思うわけで。
芋を焼く任務が終われば再び戻って来ようと人知れず思い立ち上がれば、ギュッと掴まれる手。
「……クルル?」
クルルを見るが、俯いたまま何も言わずただ俺の手を強く握っているだけ。
まさか、クルルが行くなとでも言っているのではないだろうか。
そう思ったら嬉しくて、しかし言葉が欲しい俺は少し意地悪をしてやろうと思って。
「…離してくれないと困るんだが」
「………」
強くなる力。
ああ、可愛い。
しかし妥協はしてやらない。
「夏美が俺の芋が食べたいと言ったんだ。言われたら行くしかないだろう?」
「…………」
顔を上げるクルル。
ポーカーフェイスを気取るこの顔は、ケロロ達には分からないだろうが、この顔は今にも泣きそうな顔だ。
意地悪し過ぎたかと苦笑したところで、クルルが口を開く。
「…行くな」
「!」
「……行くなよ。行ったら、嫌いになるからな」
震えた声。
可愛くて嬉しくて、愛しくて。
「……分かった、行かない」
「…クっ」
「夏美の方が先約だが、優先順位はクルルの方が上だからな」
可愛くて愛おしくてたまらないコイツの願いを差し置いて、他のところになんて行けるはずがないだろう。
再び抱き締めれば、今度はクルルも甘えだして。
「ギロロ先輩」
「なんだ?」
「…せんぱい」
「ああ」
「………………あり、がとな」
「礼を言われるなんて、明日は嵐が来るな」
「………」
「冗談だ」
クルルの頭を優しく撫でる。
しがみつくように回された腕。
「好きだ、クルル」
囁いてやれば少しだけ身体を震わせて。
「…………………好き、せんぱい」
小さな声で返された言葉に、俺はますますクルルを好きになるのを実感した。
紅葉のように色付く頬に、とびきりのキスをしようか
キミのための、特別な言葉と共に