□しあわせな未来
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 クルルの言葉に、一瞬時が止まったような気がした。

 問題発言とも言える言葉を口にした張本人は、茶化すようににやりと笑う。

 ――ああ、からかわれているのか、と理解こそしたが、あまり考えたくない言葉に思わず眉間に皺寄せた。


「だからぁ、俺がもし浮気したらどうする?」

「…………どうって…」


 クルルが俺以外の奴の隣に?冗談じゃない。

 相手が男か女か、そんなことは問題ではないがクルルが他の奴に俺しか知らないような表情を見せるなんて、嫌だ。

 だがそれが、相手が、俺より優れていてクルルが心から選んだ相手だとしたら。クルルの幸せだとしたら。

 それを壊してクルルの隣にいることはクルルの笑顔を壊すのと同義。
 それは俺にとって、幸せだろうか。

 ……想像出来ない。

 だがクルルが離れるとしたら、それは俺が不甲斐ないからだ。


「…………………貴様が浮気したら…それは俺に愛想を尽かせたということだろう」

「………で?」

「……俺が…お前にとって不必要となったなら、邪魔はしない」


 あまりに残酷なことを言わせてくれる。

 クルルから目を離し、先ほどから痛い胸を誤魔化すように長く息を吐いた。


「……それは、俺を手放して別れることに賛成ってことかい?」

「賛成、は出来ない…が、お前がしたいようにすればいい」

「………」

「もし、お前が俺よりも他の奴を好きになって一緒に居たいと言うなら、俺はお前を縛ったりはしない。だが……俺は、お前をずっと好きだと思う」


 我ながら何て台詞だ。だが本心だ。
 本当は泣き叫ぶかもしれない。相手に攻撃的になるかもしれない。クルルに近寄るなと独占欲に駆られるかもしれない。

 多分間違いなく嫉妬する。クルルと誰かが一緒に居るのを邪魔をしてしまうかもしれないんだ。

 こんなことを考えたくない。もしもの、例えの話だとしても。そんな可能性なんて考えたくないんだ。


 ――思わずクルルを抱き締めていた。
 この体温も、少しずつ速くなる鼓動も、俺だけが知っていればいい。


「……ギロロ先輩…」

「………クルル、俺は、お前が好きだ」

「……先輩…」

「…浮気したら、なんて……頼むから言わないでくれ」


 腕の中のクルルが、一瞬呼吸を止めた。
 それからゆっくりと俺に体重を預けてくれる。どきどきと、クルルの鼓動が伝わる。


「……先輩…好き」

「…クルル」

「……変な冗談もう言わない。俺だって…先輩が浮気したら、嫌だ」

「絶対しない」

「…ん」

「…お前もするな」

「しないっスよ…絶対」

「………いい子だ」


 子供扱いすんな、と小さく吐き捨てられた言葉に思わず笑みが出る。
 抱き締めた腕を緩め目を合わせると、クルルが目を閉じたような気配。
 そのまま引き寄せられるように唇を合わせて、優しく何度もキスをする。


「……せんぱい…」

「クルル。……好きだ」

「…ククッ……俺も、大好き」


 照れたようにうっすら頬を赤らめて、はにかむクルル。この笑顔は俺しか知らない。知らなくていい。


 クルルを抱き寄せて、再び優しくキスをした。

















 願わくば、しあわせは生涯お前と続けたい



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