□キミ以外あり得ない
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 さて休憩をするか、と伸びをした。普段から丸まった背中や肩がパキパキと音がなって、凝り固まってるなとぼんやり思う。


「クルル」
「ク?」


 声がした方に振り返るより先に、赤い腕が腹に回り、肩口に埋まる赤。


「……ギロロ先輩?」
「…………」
「…何かあったんスか?」
「………」
「……キスする?」
「…する」
「クックッ…随分と甘えたさんじゃねえの」


 可愛いねえ、と笑えば、ギロロは少しムッとした顔でクルルの顔を引き寄せた。
 ギロロのちょっと乱暴で、お世辞にもうまいとは言いがたいキス。クルルはそんなキスをギロロらしいなと思いながらも、そんなキスが好きでたまらないため主導権はギロロにいつも委ねていた。
 息をつかせる気は無いのか、いつもより少し長くて、ちょっぴり荒いキス。

 苦しさにギロロの腕を抓ると、ギロロは渋々といった顔で唇を離した。


「…もっとしたかったかい?」
「…………足りん」
「クックー!いつもより素直じゃねえの。何、そんなに俺様のこと好き?」
「好きだ」
「…ック……ええー…」
「なんだ、自分から聞いといて」
「いやあ…なに、なんか企んでる?」
「馬鹿言え、貴様じゃあるまいし」
「ですよねえ」


 こうして会話をしていながら、ギロロはもぞもぞと動きクルルを膝に乗せて向かい合わせにさせる。
 …いつもならこんな事、恥ずかしいと怒りながら真っ赤になって嫌がるくせに。


「…クルル」
「……まだ息整ってないからやだ」
「……鼻でしろ」
「無茶言う…」


 ぺたり、とギロロの胸に手を置いた。ギロロの鼓動が速いのを感じて、少しだけ苦笑する。


「ドキドキしてるじゃん」
「……だからなんだ」
「慣れないことして、あとで喚かないでくださいよォ?」
「…お前はこういうことをされて平気なのか」
「さぁて。触ってみる?」


 言いながら、ギロロの手を掴み胸に誘導する。
 あてがわれた手は熱くて、クルルは自身の体温が少し上がった気がした。


「…貴様も人のこと言えないだろうが」
「ん。ドキドキしっぱなしッスよ…」
「………」
「ギロロ先輩…もっかいしよ」
「……」


 ゆっくり、クルルからギロロの唇に触れる。ぺろりと舌先で唇を舐めれば、すぐに荒々しいキスが降った。
 ぴちゃぴちゃと煩く音がする。漏れる自分の甘い声も、少し煩わしい。


「あっ、ん…!ふ、ちょ、だめ…」


 不意に触られた腰。意図を持って触れるその手にクルルは小さく抵抗したが、ギロロの手はゆっくりと煽るように撫でていく。


「んっ、ふぁっ」
「…クルル…」


 ギロロの低音で囁かれてはたまらない。
 ゾクゾクと腰に甘い痺れが走った。

 キスは次にクルルの胸に降りていく。甘く吸われ、軽く噛まれると思わず腰が浮いた。


「…クク…なぁ、ギロロせんぱ…俺まだ、仕事が…」
「どうせケロロの遊び道具だろう。後にしろ」
「……ククッ……ははあ、さてはそれかい?」
「………なにがだ」
「最近たいちょーとばっか居るから……嫉妬でもした?」
「………くだらん」
「ククッ……んっ…」


 僅かに機嫌が悪くなったのを見て、図星だなとクルルは口元に笑みを浮かべる。
 こうして嫉妬をするギロロの愛にクルルは少しだけこそばゆい。
 …本当に俺のこと好きなんだなあ、と、満たされる感覚に慣れず、クルルは無意識にギロロの頭を抱き込んだ。


「…クルル?」
「……ん〜…」
「どうした……お前が嫌なら、これ以上はやめるが」
「…嫌じゃねぇんだけどな…ククッ…」
「……」
「…クルッ!?」


 グン、と背中が不安定になり視界が反転したクルルの上に、ギロロが被さった。

 ぱちくりと瞬きをするクルルに再び口吻が降る。
 舌を絡める度に心臓が破裂しそうになって、クルルはギロロの軍帽を握ることで気を紛らわせた。
 ひとしきりキスをした後、ギロロはゆっくりと顔を上げる。


「……いい顔だな」
「…クハッ…何それ、変態クセェな」
「………」
「あんたこそ…面白いツラしてますけどね」
「…クルル」
「ハイハイ……今夜はテント行くから」
「…早めに来い」
「了解。…それまで我慢できそ?」
「……このまま昼寝がしたい」
「ん」


 ぐりぐりと甘えるように頭をすり寄せられて、クルルはくすりと笑った。自分よりもずっと年上でいつも怒った顔で先輩風吹かせてるこの人が、嫉妬したり甘えてくることをきっと自分しか知らないのだろう。そう思うと何だか面白くて、誰にも知られたくなくて。


「クルル…他の誰のとこにも行くなよ」
「………あらぁ。クックックッ」
「……何がおかしい」
「別にィ」


 貴方と同じ事を考えて居たのよ、なんて。

 嬉しくて、恥ずかしい。


「……俺は何処にも行かねぇよ」


 一度知った愛を手放すのは怖くなった。
 あんたのとこにだけ居るから。だからずっと、一緒に居てね。





















「…待っ…久々だからって…ちょいと張り切りすぎじゃ、ないっすかね…?」
「まだ終わってないぞ」
「…う、あ、ばか…!」
「クルル…クルル…!」
「はっ、あっ、も、やぁ…!」




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