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□キミと暮らしてみたいんだ
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「ん、ふ」
軽く啄むようなキスから、深くなるキスに頭がクラクラする。
酸欠、ってのとはまた少し違う感覚で、なんだか溶けるような感じ。
「…く、…は、ん」
「……ん…クルル…」
「ふ、ぁ…も、くるし…」
「……ふ」
一度唇を離して頬や額にキスをして来る先輩に、思わずくすぐったくて身を捩る。
先輩に一緒に暮らしたいって言われて、最初は凄く驚いた。
何言ってるんだこの赤ダルマ、頭打ったのかよ?なんて思っていたけど、なんか、じわじわ恥ずかしくなって。
…嬉し、かったんだ。
顔のあちこちにキスをされながらふと、先輩の理想の新婚生活ってのを考える。
変に乙女思考な先輩。
まさかずーっとひっついて離れない、なんて砂糖吐くような甘ったるい事をしたいなんて…思わないと思いたい。
いやまあ、俺はそれでも良いけど、流石に、仮にもしずっと暮らしていくとしたら、それは辛いだろ。パソコン出来ないとか、殺す気か。
…まあでも多分、亭主関白ってやつかねえ。
…先輩の振る舞いや立ち位置的に多分役割は旦那様ってとこだろうから、俺が嫁側か。
俺が嫁なら、飯は作ってやらなきゃなんねえわけだろ?
面倒くさいことこの上ないが、正直先輩の料理を食べる気なんか無い。
タイプGなんて絶対ご免だし、多分先輩の料理ってサバイバル系だろ。
いつだったか、先輩が料理してるの見てダメだなって思ったくらいだ。
焼くのに手榴弾なんか普通使わねえだろ。
「(……先輩と暮らす…か…)」
…っていうか……先輩が、旦那…か…まあ、良いけどさ。
………、ちょっと……こーいうの憧れてたし…。
…面倒でも……まあ…いいか。
「…ひあっ!?」
ゆるゆると、体を這い回っている手に思考が中断した。
先輩を見れば、不機嫌そうに顔をしかめている。
手を叩けば、代わりに唇を塞がれた。
「っ!…んっんんっ」
「……クルル…」
「んっ、は…っな、なんスか…キスだけって、言っただろォが」
唇が離れ、息を整えながら先輩を睨む。
先輩は怒っているのか泣きたいのか、そんな顔をしながら言った。
「何を考えてたんだ」
「は…?」
「お前、考えごとしていただろう」
……流石っつーかなんつーか。
そーいうことには敏感だよなァ、先輩って。
「気になりますぅ?」
「……気にならないわけじゃない」
「ククッ…先輩の料理は食いたくないなァって思ってたんですよォ」
「ハア?」
訳分からんといった顔をする先輩は、俺の上から退けてその場に座る。
起き上がって先輩の顔を見ながら、くつくつと笑った。
「料理は俺やりますんでぇ、ご心配なく」
「……クルル…が…?」
「モチコース。文句あんの?」
「いやっそっ、そうじゃない!……お…お前の手料理を独り占め出来るなんてと、思って…な」
「っ!……ば…バカじゃねーの……」
…ああもう、いきなりなんだよもう。
天然って恐ろしいわマジで。
「クルル、有難う」
「…死活問題だから仕方無く作るだけッスよ」
「そうか」
なに笑ってンだよ、ばか。
「…ちっ…先輩、早速ですけど何食いたい?」
もうこうなりゃ自棄だ。
料理出来ますアピールでもしてやろうじゃねえか。
「ギロロ先輩、何が良いッスか昼飯」
「う、え…ああ…」
「言葉にしてくれなきゃ分かんねえスよ」
「あ…あの…俺はあまり料理には詳しくないから、お前の好きなもので…」
…先輩、確かに地球に来てたいしたもん食ってないけどさ。
駄目だなこの人。
「えーじゃあ三食カレーでも良いッスか?」
「……お前のカレーは美味いから好きだが…あまり続くのは…」
「やだなぁ冗談ですよォ。……先輩好きなもん無いの?」
せっかく作るんならさ、先輩の好物作って食わせてやりたいじゃん。
…なんて、まあ言わないけどな。
「…好きなもの………肉?」
「…………生肉出すぞ」
「すっすまん」
「あーもう、肉ね肉。あ、変なもんも作っていーい〜?」
「いっ良いわけ無かろう!!」
「ちぃ、つまんねーの」
でもまあ、それでもいいか、なんて。
キミと暮らしてみたいんだ
「(一緒に居たいと思うのは、あんただけじゃないんだぜェ)」
「(お前を側で見ていたい、なんて、言えたら良いんだがな)」