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□新境地開拓部屋
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日向家の家事当番に追われながら、ふうと溜め息を吐いた。
洗い物は終わった、トイレ掃除も、部屋の掃除も終わり。
あとは洗濯物を干すだけ。
お昼近いこの時間。
洗濯物を干すために庭に出れば、赤色が庭でいつものように銃を磨いていた。
その赤色を意識しながら、洗濯物を干す。
ついこの間、ギロロとは同性ながらに恋人って関係になった。
原因、というかきっかけはクルルの発明した惚れ薬だったんだけど。
そんな発明品で、ギロロとらぶらぶな感じになっちゃって、まあ、薬が切れるまでずっと、ギロロとキスしたり…して。
薬の効果がギロロより先に切れたときには、情を交わす一歩手前で本当に焦った。
だけど不思議とちっとも嫌だとか思わなくて、結局流されるまま事に及んで。
ギロロが正気に戻ったときには、自分から好きだなんて言ってしまった。
拒絶されちゃうかな、なんて思ったけど、ギロロは「仕方ないな」、なんて言いながら優しく笑ってくれた。
そんなわけで、親友から恋人って関係になったけど…イマイチ実感無いというか、どう接したら分からない。
「……」
いつも通りを装って、震える手で洗濯物を干しながら、ギロロを盗み見た。
相変わらず銃器を広げて整備をしてるギロロは、ちょっと色目なしに格好良いと思う。
洗濯物がそろそろ干し終わるくらいになって、大きく息を吐いた。
「ぎ、ギロロ…あの、さ」
「ん?」
「あの、お、お昼、食べない?」
うわあ、我輩声震えてやんの。
断られたらどうしようとか、そんな事考えるから…かな。
恥ずかしくって俯いているから、ギロロの顔は分からない。
ギュッとエプロン握ってないと落ち着かなくて、でもそんな情けない我輩にギロロはいい顔しないかなとか、もう心臓は鳴りっぱなしで。
ギロロが少し笑ったような気配がして顔を上げたら、優しい顔で笑ってくれていた。
「ああ、食べる」
「ほ、本当でありますか!」
嬉しくて思わず声があがる。
ギロロはまた可笑しそうに笑っていた。
「じゃっじゃあ我輩、美味しいの作るであります!」
「お前の飯はいつも美味いぞ」
「…っ、そ、そうでありますな!我輩ってば天才だしぃ!」
…うう、ギロロのバカ。
なんでそういうこと平気で言うのよさ。
「あー忙しい忙しい!」
熱くなる顔を誤魔化すように台から飛び降りて台所に向かう。
良かった、と緩む頬。
ギロロの好きな味くらい、長い付き合いだから分かってる。
さっと作って、ギロロに声をかけた。
作るときも、食べてもらうときも、夫婦みたいだなあなんて、ちょっと思ったり。
「(本当にそうなったら、素敵でありますなあ…)」
まあ…出来っこないけど、さ。
「…ケロロ」
「ケロ?」
「……ついてるぞ、口元」
「へ?あ、え?」
「馬鹿、逆だ」
「えぇ?とれた?」
「…そこじゃない。ったく」
ヒョイと椅子から降りたと思ったら、ギロロは我輩の椅子に乗ってきて。
びっくりしたのと同時に、口元に湿った暖かくて柔らかいものが――ギロロの舌が、触れた。
「…っっ!!!!!?」
「……」
口元を押さえてギロロを見る。
格好良い顔。近い距離。いつの間にか肩に置かれてる手。
…ああもう、顔が滅茶苦茶熱いし、心臓が破裂しそうであります。
「…ぎ、ギロロ…っ」
「…やっぱり…美味いな」
「…っ!!」
「ケロロ、ほら…まだついてる」
「…んっ…!」
優しく取り払われた手。
重なる唇。
ああもう、ギロロのばか。
どうぞ召し上がれ?
たまにはいいよね、こんなのも