□小さないのち
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 腹の子のことはバレずになんとかことを終えた。

 あれから度々からだは抱かれた。

 次第に大きくなる腹。

 タマゴをそろそろ腹から出して、容器に移し替えよう。
 本来的には腹の中で充分な大きさに育ったタマゴから自然と産まれてくるものだが。

 この体では限界もある、それにバレたらまずい。

 腹から取り出すのは一人では無理がある。
 頼りたくはないが、内密に行ってくれそうなのは一人だけだ。


 実験だという名目で話せばだいたいの奴らが納得する。
 俺が奇妙なことをするのは知れ渡っている。
 頼れる一人に紹介された病院に行くため、しばらくの休暇をもらった。

 隊長は適当な相槌をしながらガンプラに勤しんでいたが気にせず地球をあとにする。

 赤い人にはバレないように。


 大規模な手術だった。
 それでも取り出されたタマゴに、思わず顔が綻んだ。

 ただ一つ。

 このタマゴはやはり普通の母胎から産まれたわけではないから、孵化せずに死滅する恐れがあるらしい。

 それは特に驚きはしなかったが、死滅してしまう可能性より生きて生まれ出る可能性に賭けたかった。

 ほんの数日入院し、小さなタマゴを持ち帰る。

 タマゴが孵化をするまでどれくらいだろう。
どんな子だろう。先輩に似るだろうか。俺に似るだろうか。

 名前は…まだ決めてなかった。


 地球に戻ってこっそりタマゴを隠した。
 地球を離れている間、特に大きな事件はなかったらしい。


 その日、ギロロ先輩が来た。苛立った様子で、痛く激しい抱き方だった。

 冷たい床を汚しながら、放たれる熱いモノにビクビクと体が震えた。

 妊娠してから感度が一段と良くなったらしい。
それから、甘えたくなってしまっている。

 思わず、先輩の背に腕を伸ばしてしまった。いつもはしない行為。

 先輩の動きが一瞬止まって、俺を凝視した。

 慌てて腕を離して、目をそらす。


 気持ち悪いことをした、嫌そうな顔をされた、甘えるつもりはなかった、どうしよう。どうしよう。


「…クルル、どうしたんだ」


 先ほどまで荒っぽく抱いていた人とは思えないほど優しい声だった。

 無言で首を振る。怖くて泣きそうになる。情けない。


「……クルル、震えてるぞ。…すまん、怖かったか?痛くして悪かった、大丈夫か?」


 優しい手付きで頭を撫でられた。

 小さく頷けば、少しだけ戸惑った顔をされた。


「珍しいな。…やはり最近おかしいぞ、どうしたんだ」

「……別に」

「話したくないか?」

「………」

「…俺に抱かれるのは、もう嫌になったか?」


 違う。違うそうじゃない、抱かれなくなる方がいやだ。
 俺を見ていなくても愛が無くても、ただ唯一の繋がりを断ち切らないでくれ。

 首を振れば、先輩はそうかと小さく呟いて行為を再開した。


 すまん、と小さな声が聞こえたような気がした。





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