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□逃げ腰だったのはどっちだ
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いつもより楽しそうだな、とギロロの独り言を拾ったのは、近くで夏美のお菓子を食べていたケロロだった。
夏美殿が?そりゃそうでしょ。だって睦実殿が居るんだもん、と心の中でやれやれと返したケロロだが、ギロロの視線の先が夏美でないことに気付く。
追えば黄色。ギロロとは犬猿と呼ばれているクルルだった。
「…チッ」
「……」
不機嫌なギロロに関わるとろくなことはない。それを分かっていながら、ただただケロロはギロロを凝視した。
クルルは睦実の隣でくつくつ笑いながらパソコンを見せたり話したり、確かに稀に見る上機嫌な様子である。こういう時のクルルに関わるのも要注意なのだが、ギロロは何故にクルルを睨むように見つめているのか。
ややあってそんなギロロに声を掛けたのは夏美で、その苛立った様子はすぐ消え失せた。
なんだ、やっぱり気のせいか。
そうホッとしながら夏美に顔を赤くしてぶっきらぼうな態度をとるギロロを横目にお菓子を一口。
やっぱり夏美殿のお菓子は美味い、と顔を上げたら、今度はクルルがギロロを見つめていた。
さっきまでの笑みは消え、ただいつもの顔でギロロをじっと見つめているのだが、なんだか少し寂しげにも見える。
そんな視線にギロロは気付かないまま、夏美のお菓子を口に入れてはデレッとして、先の棘など欠片すら感じさせないほどに緩みきっていた。
なんだこいつら。ケロロは二人をそれとなく見回した。
自分の知らぬところで喧嘩をして拗らせて謝るきっかけを探しているのか、はたまた別の理由かと思考を巡らせる。
夏美のお菓子を咀嚼しながら行き着いた先は、こちらに面倒事が来ないならこのまま巻き込まれないようにしよう、だった。