□例えばの話をしようか
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 例えばそう、例えばなんだけど。


 日向家の地下、隊長殿の部屋。

 部屋の主の姿はなく、武器のカタログを見ているギロロと、そのすぐ近くでカタカタとパソコンで作業をするクルルだけがそこにいた。

 そんな中で、クルルの例え話がギロロの耳に届く。


「なぁ、例えば。愛の告白されたら、先輩ならどうします?」

「……また突拍子もないな」

「好きです、付き合ってください、って言われたらどうするよ」

「それは誰に」

「さあ、誰かに。誰でもいいな、女でも男でも?」

「男も選択肢にあるのか…」

「あるある、超ある。ほら、タママとかそうじゃん」

「……ああ、まあそうか」


 偏見がある訳じゃない、実際にギロロは過去にそんな経験もあった。女も男も、片手に収まる程度ではあるが。

 ただ告白してきた大半は兄に近付く口実であるとも知っていたから、実際に本当に好意を寄せてきたのは果たして居たのかどうかは、ギロロはもう知る由もない。


「…女でも男でも、断る」

「ふーん?なんて言うの。他に好きな女がいるから?」

「べっ、別に居ないが…まあ、その、そうだな…俺にはやるべき事があるから、そちらを優先したい。だから無理だ、と」

「二の次でもいいから、って言われたら?」

「…全くの知らない相手なら期待を持たせるのも悪いからな、やはり断る。見知った相手なら……身近さにもよるが、今後の関係に支障が出ないよう考える時間をもらう」

「結局お断り?」

「そうだな」


 なんだ、つまらない。
 そう言いたげなクルルは、直ぐにまた質問を重ねる。


「隊長とかドロロ先輩とか」

「あいつらをそんな風に見れると思うのか…」

「やだなぁ例えば、って言ったじゃん」

「あの二人も勿論お断りだ。一発殴って忘れさせる」

「クッ、そういう物理で解決させようとするとこ嫌いじゃないぜェ〜。タママとか、モアは?」

「…そいつらもあり得ないだろうが…タママは殴る。モアも断るが、あの娘が俺に気をやるのは余程何か悩みがあるんじゃないかと思うからな、話は聞こう」


 なんて律儀な、とクルルは笑う。笑いながらまたクルルは何かを考えたようで、ギロロに問いかけた。


「……んーじゃーあ、日向夏美だったら?」

「なっ、夏美だと!?」


 ぶわっ、と効果音が付きそうなくらいにギロロは顔を赤らめる。先程とはうって変わって狼狽えるギロロに、クルルは喉を鳴らして笑った。

 待て、だの、夏美がそんな、だの、頭から湯気を出しながらギロロはうんうん唸っているのを眺めながら、クルルは「ねぇ」と話し掛ける。


「好き」

「は?何だ?」

「好きでーす」

「…意味が分からん」

「愛の告白じゃん?」

「ふざけた真似はよさんか馬鹿者」

「例えば、ですから」

「………夏美の告白なら、断るぞ」

「ク?…え、夏美も?何で?好きじゃん」

「すっ、好き、って……そんなことないっ」

「だって夏美がサブローといたら嫌でしょ」

「そっ、それは彼奴が単に気に入らんだけだ!」

「ふぅん、まあいいけど」


 くつくつ笑うクルルは、やがて興味を無くしたらしい。背を向けて作業を開始したクルルに、ギロロは小さくため息をついた。












「…告白くらい俺から言わせろ」

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